第一章 見習いは化け物に頭を食われる⑤
働かざる者食うべからず。食べ物がなければ生きていけない。
めんどくさがり屋でも、その現実だけは誰より理解しているアキラである。
「お前の役目は、その荷物を死守することだけだ! いざとなったら、俺らを見捨てて逃げろ! 仲間より荷物を優先してこその〈
「はいっ!」
本部のあるアガツマの街を一歩外に出た荒野にて。
〈
今回運ぶものは大きな白い
――なかなか有能な見習いなこって。
元気がいい。やる気もある。足腰もしっかりしている。
そして最終試験を通過するほどの知識もある。
〈
そんな一次試験を突破できるのは、毎年百人くらい受験者がいて五人いるかどうか。そして二次の基礎運動能力試験を突破できるのが、そのうち一人か二人。アキラが試験を受けた時は二人だけだった。今年は三人。比較的豊作な年なのだろう。
――試用期間でやめなければの話、ですがね。
「ほんと、元気がいい見習いくんっすね~。それだけじゃないといいけど」
アキラが手近な岩に座って頬杖付いている間にも、今年の期待の星への確認作業は続く。
「ここから先は町の外――通称『何でもない場所』だ。その特徴は?」
「はい、モンスターがいることです!」
「モンスターと動物の一番大きな違いは⁉」
「機械だけを食べることです!」
それらは別に〈
「そうだ! どこから生まれたか知らない化け物、モンスターは機械だけを食べる。つまり、人間が普通に歩いているだけでは、よほど尻尾を踏むなりしない限りは襲われない――今回の荷物は
――念入りな確認だなぁ……。
去年のアキラの時もそうだったが。
このゼータ=アドゥル副局長、一見『俺がクールで知的な一匹狼だ』的な素振りをしているが、なんやかんや物凄く面倒見が良い。たいてい下っ端のアキラとなんか組みたがらない局員が多い中、ずっと組んでいるのが良い証拠だろう。……ただ心配性なだけかもしれないが。
そんな教官兼上司に、フェイはまっすぐ手を上げた。
「質問です! 今日運ぶコレの中身はなんですか?」
「伝票以上のことは知らん! というか、知ってはならない――これが〈
「いや、それは知ってるんですけど……でも副長さん、さっき『
――あ~、墓穴を掘ったっすね。
アキラはせせら笑う。通常なら掟通り、〈
今日運ぶ荷物の中身を、アキラも知っているが……それは
だけど、ゼータは表情を動かさなかった。
「それは、俺が依頼主だからだ。あくまで今日のは練習用。気にするな」
「はあ……」
アキラが初めて見るフェイの不満顔だが、やっぱりゼータは見て見ぬ振りらしい。そのまま地面に置いていた自分のライフルや弾倉や予備の武器等々を背負った。
「よし、出発するぞ!」
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