4-14
「わたしは小さい頃からコンプレックスの塊でした。自分の外見が好きになれず、美人な友達を羨んだこともありました。そんなわたしに転機が訪れたのは…」
「わたしは大学に入るまでひたすら勉強に打ち込んできました。でもこれからは勉強だけではなくもっといろいろなことに挑戦して行きたいと考えています…」
候補者がそれぞれ、想いを口にしていく。こう言っては悪いがどこかで聞いたような話が殆どだった。残念ながらあまり共感は出来ない。でも、彼女たちは少なくとも自分が求める「なにか」に向かって行動は起こしたのだろう。その「なにか」がわたしにとってはくだらなく思えるものであっても、きっと彼女達には大切なのだ。そう思うと、彼女たちに謝りたい気持ちが沸いてくる。
台無しにしちゃって、ごめんね。恨むなら、あの怪しい宗教団体を恨んでね。今日のわたしの気持ちはさながらジェットコースターだ。こんなくだらないミスコンぶっつぶしてやる、という気持ち、宗教団体許すまじ、の気持ち、何も知らない候補者に対する罪悪感、物事がうまくいくかの不安感、うまくいってほしいと願う気持ち。ぐちゃぐちゃの想いを抱えて半ば放心しながらステージを見つめる。
最後、湊さんの手にマイクが渡った。祈るような気持ちでそれを見守る。本番前に湊さんと話す時間が取れなかったのが心残りだ。
マイクを渡されてそれを口元に持って行ったまま、数秒時が流れる。彼女の目線が、誰かを探して客席を彷徨うのが見えた。
司会者が「緊張しちゃいましたかね、でも大丈夫ですよ、楽しんでいきましょう」とフォローを入れる。
湊さんの目が客席にいた剣崎に留まる。彼女は剣崎を真っ直ぐに見つめた。腕を組んで佇んでいた剣崎も、湊さんを見つめ返した。
ん?
わたしの心に微かなさざ波が生まれた。あの二人の間に、なにかある?
マイク越しにすっと息を吸い込んだ音が微かに響いた。そして。
彼女は真っすぐに背筋を伸ばして口元に不敵な笑みを浮かべた。
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