4-12
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病室での会話を思い出して、改めてお腹に力を込めた。失敗は許されない。
コンテストは滞りなく進行していった。それぞれの紹介、特技の披露、なんとセーラー服を身につけたポージングの場まであった。なんでセーラー服やねん!わたしでなくとも突っ込みたくなるに違いない。スカートから出た湊さんの細い足に巻かれたギプスが痛々しい。
色とりどりの衣装を着た美女たちが、ステージの上でポーズを取ったり会場に笑いかけたりするたびに、観客の中から、「お~」だの「○○ちゃん、がんばれ!」だの、野太い声が上がる。眺めているうちに、自分の中でむくむくと沸き上げる一つの気持ちに気付いた。
これはだめだ、思ってはいけないやつだ。分かっていたことじゃないか。いや、分かっていなかったのだ、本当の意味では。
実際に目にしてみて初めて理解できることがある。認めたくない。しかし、認めない訳にはいかない。抑えきれない思いが、ぽろりと口からこぼれおちた。
「く、くだらない…」
こんなもののために、三か月を費やしてきたのか。企画は項目ごとに分かれて担当していたから、わたしと美都は最終審査項目の部分しか気に留めていなかった。全体像が見えていなかったとはいえ、これは酷い。
かわいい、男受け、理想の彼女。女性に夢を求める男たちと、その男たちを手玉に取ってやろうとする女たちの、これは食い合いだ。そんなもん、勝手にやってくれ。わたしが求めていた「なにか」はこれじゃない。
同時に、疑いようのない確信が胸に沸いた。柏木さんのような人物が、こんなイベントに理由もなく注力するわけはない。ブリーフィングでの彼女の落ち着いた佇まいと冷たい声音を思い出す。あれは、ミスコンを自分の目的を達成するための道具としか思っていない態度だ。そうでなければ、彼女は自ら先陣を切ってこんな下らんイベントを壊滅させるべく乗り込んでくる側だろう。断言してもいい。わたしは大きく息を吸い込んだ。
「ぶっつぶす」
これなら、心おきなく、やれる。
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