4-11

「お前ら、候補者の真剣な想いを宗教団体のしょうもない目的のための道具にされるのが嫌だったんちゃうんかよ。俺らの大学でわけわからん宗教団体が幅利かせるのが許せなかったんちゃうんかよ。今回俺らがいくら事前に暴露したところで、そんなもんもみ消されるの分かってるやろうが。あちらさんは大学公認団体のミスコン運営委員会で、こっちは有象無象の寄せ集めやぞ。俺らがいくらこのミスコンはイカサマだって声上げたところで誰も耳貸してくれるわけないやろうが。そんなん分かってるのにお前らすぐ諦めて逃げようとして、そんなんやからなにも成し遂げられないんだろうがよ」


 正直言って驚いた。


 剣崎と知り合って以来、やつがこんなにも真剣に何かを訴えるのを見たのは初めてだったのだ。いつもへらへらと物事を斜交いに見て、真面目なことほど茶化して混ぜっ返す。そんな剣崎の新しい面を見せつけられて、わたしは驚くと同時に胸が熱くなるのを感じた。


 剣崎は剣崎なりに、湊さんの想いに応えられないことを申し訳なく思い、せめて湊さんの成し遂げたかったことを手伝ってあげたいのかもしれないと思った。学祭をいいように自分たちの利益のために使おうとする団体に義憤を感じていたのかもしれない。


 いいとこあるじゃん。周りも見回すと、概ねみんな同じ想いのようで、異議を唱える者は誰もいなかった。


「わたし、やっぱり出ます」


 湊さんが力強く言った。


「ギプスは、ドレスだったら目立たないし」


「そうしたら、わたしと美都でサポートするね。わたしたち、スタッフとして舞台袖にいるから湊さんが動きやすいように支えるよ」


 感動で震えそうな声を絞って私は言った。「なにか」を成し遂げたいと思っていた。みんなで力を合わせて。


 今、わたしたちの想いはひとつになっている。

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