4-10
掴みかかるように湊さんの肩に手を伸ばしたお兄さんと揉み合いになり、湊さんは転倒して足首を骨折したのだという。
「たまたま、ファイナリストのドレスに合うハイヒールを試着中だったんです。いつも履かない高いヒールだったから、わたしも思った以上にバランスを崩してしまって」
そういうことか。湊さんの足に巻かれた包帯が痛々しい。
「結局わたしがこんなことになってしまって兄も動揺したのか、それ以上追及はされなかったんですけど、でもわたしが出場できないからには兄はきっと今急いで代打を立てようとしていると思います」
どうせ出来レースなのだから、代打はそこそこの外見の女性を連れてくればいいだろう。あとはなんとでも観客を言いくるめることは出来るはずだ。
「結局、無駄骨になっちゃうね」
ぽつり、と美都が言う。結局、湊さんのお兄さんは代打の女性を湊さんの代わりに祭り上げて、それを足掛かりに教団の勢力を伸ばしていくのだろう。
「いや、もうこうなったら事前に全部暴露してミスコン自体を中止に追い込んだらええんちゃう?」
「そうだね。公衆の目前で暴露する目的は果たせないけど、でもミスコンさえ開催されなければ少なくとも宗教団体の信者獲得の目的は潰せるもん。賭けも成り立たなくなるし」
「それがいいかもしれません。もともと無茶な計画だったのかも。わたしの思いつきで、皆さんのことも巻き込んでしまって申し訳ないです」
湊さんも力なく言う。
湊さんが出られないのでは仕方ない。公衆の面前での暴露という点については諦めるしかない。部屋に諦観の念が漂う。それを打ち砕いたのは、剣崎の一言だった。
「逃げんのかよ」
驚いて振り返ると、そこには今まで見たこともないような真剣な顔つきの剣崎がいた。
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