4-9

 湊さんが入院したことを知らされたのは、ミスコン本番の一週間前のことだった。


 そのニュースを持ってきたのはたけやんで、転がり込むようにしてすずめ荘一〇三号室に着地した彼は言ったのだった。


「おい!さっき聞いたんやけど、湊さん入院したらしいで!どういうことや!?」


 どういうことや、と言われても、誰も分かる訳はない。仕方なく、友人のつてで入院先の病院を聞いてお見舞いに行くことにした。


 病室でベッドに横になっていた湊さんは、顔色を変えて駆け付けたわたしたちを見て目を丸くした。


「皆さん、どうして…」


 たけやんと剣崎の顔を見て、ちょっと気まずそうな顔をする。そりゃそうだろう、と思うがそこは見てみぬふりをすることにした。


「入院したって聞いたから。大丈夫なん?」


 美都が心配そうに問いかける。


「あ、はい…。ごめんなさいミスコンのことがあるから皆さんに一番に連絡しないとって思ったんですけど、どう伝えていいのか分からなくて。迷っていたら一日経ってしまって。本当にごめんなさい、直前でこんな…」


「いや、ミスコンはこの際置いといて。体調は大丈夫なん?」


 玲人君が宥めるように答えた。湊さんはしばらく涙をこらえるように下を向いていたけれど、ぽつりと言った。


「兄に、気づかれてしまって」


 ええ?とみんなで顔を見合わせる。


「あ、と言っても計画が全てバレた訳ではないんですけど。わたしがそもそもミスコンに乗り気ではないのは兄も薄々感じていたみたいで、それで言い合いになってしまって。わたしもかっとなってしまって、思わず言ってしまったんです」


— ほんとはミスコンなんて出たくなかったのに!


 それを聞いた瞬間、お兄さんは般若の形相になったらしい。


— 今さら何を言ってるんだよ?

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