4-8
十一月祭の日は、絵に描いたような秋晴れだった。
この大学の学祭は毎年この時期に四日間にわたって開催される。学生だけではなく地域の住民や進学希望の学生たちなどが数万人規模で訪れる大規模なイベントだ。屋内屋外に沢山の会場が設けられ、特設舞台での催し物や模擬店、サークルや研究室の企画展示、様々な講演などが繰り広げられ、普段からは想像もできない活気があふれる。
キャンパスの中はチラシを持った呼び込みの学生が行きかい、このひとたちは普段はどこに生息しているのかと問いたくなる。少なくとも講義室では見かけない筈だ。そこかしこで、マイクを通した声がハウリングして響き、もはや何を言っているかも聞き取れない。自由な学風を象徴するイベント、ということになっているけれど、これはもう自由というより混沌だ。そして、混沌の中、今まさにミスキャンパスコンテストの幕が切って落とされようとしていた。
時計台の前に設置されたステージの前には人だかりが出来ている。垂れ幕には大きく「祝・初ミスキャンパスコンテスト」の文字が踊っている。司会の青年がマイクを通しておもむろに観衆に語り掛ける。
「皆さん、本日は待ちに待ったミスキャンパスコンテストの日です。是非、盛り上げてまいりましょう!!!」
おおお、と歓声がそこかしこで上がる。運営ボランティアの一員ということで配置されている舞台袖から観客席を見渡して、わたしは汗の滲んだ手の平をぐっと握り込んだ。うまくいくんだろうか、と今更ながら不安になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます