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「剣崎と付き合いたいから協力して欲しいって」
そう言った時だけ、どこかが急に痛んだようにたけやんの表情が歪んだ。わたしは驚いて息を飲んでしまう。
「湊さんからそう頼まれたの?」
「そう」
「でもそれって、ちょっとひどいんじゃないかな?こう言っちゃなんだけど、湊さんはたけやんの気持ちに気付いてるんだと思ってた。それじゃまるで」
利用してるみたい、と言おうとしてぐっと言葉を飲み込んだ。
「まあでもな、好きとか嫌いは自分でコントロールできるもんちゃうし。彼女は彼女なりに悩んでたんだとは思うで」
「だからって…」
自分の中で湊さんに対して抱いていた好意が崩れ落ちていくのを感じた。と共に、心のどこかでやっぱり、と納得している自分もいた。
湊さんがたまに見せる、したたかな強さのようなもの。
「それで、たけやんどうしたの?協力してって言われて」
「ん、いや、それは出来んって言った。湊さんのことを好きっていうの以上に、剣崎のことをツレとして大事っていうのもあるやろ。俺がそこで湊さんに協力したら、剣崎は気使うやん。あいつ意外と義理堅いとこあるしな。俺らの間がぎくしゃくすんのはいややねん」
気付いてた?とたけやんは可笑しそうに言う。
「最近剣崎、俺にタバコ買ってくんねんで」
今までたけやんからもらいタバコばかりしてたくせに、最近たけやんが気付くと鞄の中に未開封のセブンスターが放り込まれているらしい。
「あと、テレビのチャンネル譲ってくれる」
仲直りの仕方が分からないこどもか!突っ込みたいのを我慢して先を促す。
「それで、湊さんは?」
「自分で頑張ってみるって言ってた。まあでもあの感じだとうまくいかんかったんやろな」
うまくいかなかったどころか、とわたしは心の中でため息をつく。
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