3-15

 努力は報われるんじゃなかったのか。何の努力もしなかった人間が、最後に良いところだけ攫って行くなんて、そんなことが許されるのか。どうしても納得がいかない。納得がいかないけれど、花ちゃんの子供らしい笑い声を聞いてほっとしている自分もいる。


 やるせなさと安堵と自己憐憫の情が相まってじっとしていられず、わたしは寝ている剣崎の尻を思い切り蹴り上げた。ってぇ、と剣崎が寝ぼけた声を上げた。


 わたしが話し終わると、湊さんはころころと鈴を転がしたような笑い声を立てた。

ご丁寧にパチパチと両手を叩いて、わたしは自分が何かとても気の利いた話をしたかのような錯覚にとらわれる。なるほど、世の男性はこうしてキャバクラにはまっていくのか、と目からうろこの想いだった。


「面白いですね剣崎さん」


 朗らかに湊さんが言う。


「いや、今の話は剣崎が面白いということを言いたかったのじゃなくて」


 如何に面倒で腹が立つやつなのかを説明したかったんだと言おうとしたけど、湊さんがきゃらきゃらと笑い続けるので、諦めた。


 わたしの悪いところはこうして物事をなあなあにしてしまうところなのだ。そうして、まあいいか、とトラブルの種を放置した結果、後になって手痛いしっぺ返しを食らうことになる。


 この時だって例外ではなかったのだけれど、それをわたしが実感するのは少し後の話だ。

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