3-13

 だけど剣崎の言う通りで、花ちゃんがいくらゲームが上手だと言ったとて、暇を持て余して徹夜でプレイしているような奴に勝てる訳はない。三回やって花ちゃんが三回負けたあたりで大分雲行きは怪しくなってきた。


 たけやんが「花ちゃん、散歩行こか」と誘う。


「腹減ったしそこのイズミヤでなんか美味いもの買おうや」


 声に隠し切れない焦りがにじみ出ている。


「ねえ、ほんまや。あたしもなんか小腹空いてきた。ついでに本屋さんものぞきに行こうか」

「行こう行こう」

「せやせや」


 それでも花ちゃんは頑固に首を振り続けた。剣崎は勝ち続けた。

 玲人君が信じられないものを見るように剣崎を見つめた。


「お前…」


 花ちゃんの手前、無理矢理押さえつける訳にもいかない。乱暴な言葉もつかえない。手も足も出せないわたしたちをあざ笑うように剣崎が言った。


「真剣勝負やからな」


 花ちゃんの頬が赤く染まっていた。心なしが目尻に涙がにじんでいるように見えて、わたしたちは戦慄した。


それで、どうなったんですか?と湊さんが訊ねた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る