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クルクルと白いページの上を走るピンクや青や黄色の線。白いページの上には太めの線でお姫さまや花や動物が描かれている。「はみ出さないように周りから塗ったらいいんだよ」と言いかけてやめる。子供でいる間くらい、好きなだけはみ出したらいい。こうしなければいけない、ということに縛られずに何かを楽しむことのできる時間というのは本当に限られているのだ。
幸い、剣崎と花ちゃんが顔を合わせることはあまり多くはなかった。面倒なことが嫌いな剣崎が花ちゃんがやってくる日にはふらりと出かけていくせいもあったし、そもそも夏の間は怪しげなバーでのバイトに精を出していてすっかり昼夜逆転の生活を送っていたせいもある。
「子供一人いるだけでも色々気をつけなあかんのに、ここに剣崎おったらややこしくてしゃあない」
玲人君が言うと「ほんまやで」とたけやんが相槌を打つ。
「あいつほんまにおるだけでめんどくさいからな」
「花ちゃんの教育にも悪いしね」
そうだそうだと和やかに笑い合ったわたしたちはすっかり油断していたのだ。
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