3-6
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波乱の予感はあったかもしれない。
湊さんはたけやんがいなくても度々すずめ荘に足を運んでくるようになった。オーデコロンを付けているのか、湊さんがやってくると部屋の中は決まっていい匂いがした。フローラル系の甘い香り。
「女の子のにおいがする」
鼻をくんくんさせてみると、玲人君にとてつもない憐みの眼差しで見られた。
「あ、そういえばさ、この前そこの満喫でスラムダンク全巻読んだ!」
今度は「はああ」、と大きなため息をつかれる。横で聞いていた湊さんが、「スラムダンクってバスケの漫画ですよね?面白いんですか?」とかわいく首を傾げた。仕草がいちいちかわいい。
「うん、わたしもね剣崎に薦められて読み始めたんだけど、これが本当に面白くて。キャラがそれぞれすっごいいい味出してるんだよね。感動する場面も多くて…」
湊さんはにこにこと聞いていた。
「この部屋にいる皆さんって本当に仲いいですよね。漫画の勧めあいとか羨ましいなあ」
「いや、すすめあいというか基本剣崎が一方的にこれ読んどけとか言ってくるだけなんだけど」
「剣崎さんって、どんな人なんですか?」
どんな人?玲人君と顔を見合わせる。どんな人、と言われても。
「ろくでもない人」
玲人君が素っ気なく言う。
「迷惑な人」
わたしも言う。
「傍若無人」
「野放図」
「歩く災難」
「唯我独尊」
言葉を並べても並べても、うまく説明できない。仕方なく、わたしは具体的なエピソードを語ることにした。
「例えばね、剣崎の迷惑具合をエピソードで語るとすると…」
美都がその女の子を連れてきたのは、わたしたちが一回生の夏休み頃の話。
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