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 こんなにかわいい子でも見た目に自信がないとか自分を変えたいなんて思うんだ。わたしは感慨深いような想いで湊さんを見つめた。わたしがこんなにかわいかったら、調子乗りまくってミスコンでもなんでもどんどん出ちゃうけどなあ。隣りの美都も同じような想いを抱いたらしく、「羨ましいなあ」という感情がだだ洩れの表情で話に聞き入っている。湊さんがホッと一息ついて、また話し始めた。


「最初は楽しかったんです。きれいにお化粧してポスターの写真を撮ったり、普段話すことのない他の学部の人達とも知り合えたりして。美弥子ちゃんは相変わらず優しくて、わたしが緊張しているとすぐフォローしてくれたし、ああ、出場することにしてよかったって思ってたんですけど…」


 微かな違和感を感じ始めたのは、つい最近のことだったという。古くからの信者の人に真子ちゃん、ミスコン出るんだって?と話しかけられた。ミスコンって言っても学祭の出し物程度なので、と説明はしたものの、「やっぱり知名度は大事だからね。わたしたちのためにも頑張ってね、応援してるからね」と励まされて首を傾げた。たかがミスコンに出場するのに知名度、というのはいささか大袈裟な気がする。そして、自分がミスコンに出場することがなぜ信者さんのためになるのだろうか。


 もう一つ不思議だったのが、時間がたつにつれて美弥子の目の色も変わってきたことだ。最初は居てくれるだけでいいよ、なんて言っていたのに、最近ではあたかも真子の優勝が決まっているかのような話し方をすることがある。優勝したらファンクラブとか作ろうね等と言うこともある。ファンクラブ?と真子は首を傾げた。自分は何に巻き込まれているのだろう。ささやかな違和感はどんどんと育ち、疑念となって真子を包んだ。


 疑念が確信に変わったのは、美弥子が兄と話している内容を図らずも盗み聞きしてしまった時だった。

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