2-4
「あ、はい、あの幹部の女性ですよね」
つられて丁寧語になってしまう。
眼鏡にスーツの女性を思い浮かべる。凛と背筋を伸ばして立っていた彼女はミスコンとは縁遠い人に見えた。一番最初のブリーフィングでスピーチをした後、打ち合わせで顔を見かけることはないので、日々の作業については現場に任せるというスタンスなのだろう。
「そうです、彼女が兄の幼なじみのうちの一人なんです」
どういうことだ?
「あの、兄と違って私は小さい頃から引っ込み思案で」
引っ込み思案という割には自分の魅力を最大限に発揮する方法を心得ているようにも見えるけど。でも勿論、そんな風に思うのはきっとわたしの僻みである。可愛らしく小首を傾げたり身振り手振りを交えながら湊さんの話は過去と未来を行きつ戻りつ、わたしたちは煙に巻かれた気持ちながらも必死に耳を傾けた。
―――― 美弥子ちゃん、あ、わたしは柏木さんのことを美弥子ちゃんって呼んでるんですけど。彼女は兄と同い年でわたしよりも一歳年上なんですが、わたしにとってはいつも身近にいたお姉ちゃんみたいな存在なんです。引っ込み思案のわたしをいつも気にかけてくれて、だから美弥子ちゃんと同じ大学に進学できることが分かった時、わたし本当に嬉しかったんです。
大学でも最初わたしにはなかなか友達が出来なくて…それを美弥子ちゃんがこういうサークルもあるよ、とか一回生のうちにこういう風に単位取っておいたらいいよとか色々とアドバイスをしてくれて。
だから、美弥子ちゃんからミスコンの候補者が足りないからどうしても出て欲しいって言われた時、初めて頼ってもらえたのが嬉しかったっていうのはありました。美弥子ちゃんがミスコンの企画運営っていうのはイメージに合わなくてちょっと驚いたんですけど、きっと周りに頼まれて断り切れなかったんだろうなって思いました。
わたしは目立つことが嫌いだし、そんなに見た目に自信もないので候補者として出るのは難しいかも、とは伝えたんですが美弥子ちゃんは大丈夫だよ、って。真子はかわいいし、いてくれるだけで助かるからって。それに、今までずっと引っ込み思案でなかなか友達ができなかった真子にとって自分を変えるいいチャンスだよって言ってくれて、それは確かにそうかなって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます