第106話 大丈夫? 2度目の【マナスポット】、そして更に進む3人の解放


「み、皆さんごめんなさい。今戻りました!」



 来宮さんはそう時間を置かず、着替えを済ませて戻って来た。



「っす、お帰り……」



 一目では、正直あまり違いは判らない。


 ただ制服の袖から覗く手は素肌ではなく。

 指先まで純白のグローブに包まれ、露出もなくなっている。


 膝上まで覆うソックス部分も、色・長さともに一見しての違いは無いものの。

 やはり意識すると、光沢があるなど質の差はちゃんとあった。 



「わっ、わ~! これが【マナスポット】ですか~! 凄い、本当、とっても【マナスポット】って感じですね!」


 

 そして自らの恰好へ言及されることを避けたいというように、来宮さんは謎のハイテンションで話を進めようとする。 

 ……いや、何だ“とっても【マナスポット】”って。



「『ぐへへ。来宮さん、隠したって無駄だよ? 下着姿、俺の頭の中ではちゃ~んと見えてるからねぇ。俺が選んであげた下着を着て、俺の前で恥ずかしがっちゃって。何なの、俺を誘ってんの? じゅるり――ご希望通り……今夜はお楽しみだぜ!』」


「こら、勝手に俺の心の声を捏造ねつぞうしない」


 

 ゲス顔で一人芝居してる水間さんにチョップ。

 俺、そんなに粘着質に見えてんの?


 ……本当、君はいつでも楽しそうで羨ましいよ。

 


「――さて。じゃあ改めて。皆、今回の【ワールドクエスト】お疲れ様。……俺達は昨日も見つけたけど、この目の前にある空間が【マナスポット】で間違いない」


 

 全員を労う言葉をかけてから、話を【マナスポット】へと移す。

 黄緑色をしたエネルギーが、床から湯気でも噴き出すように湧き続けていた。

 

 

「へぇ~これが……」


「……確かに。とてつもないエネルギーをヒリヒリと感じるわ」



 来宮さんも久代さんも、これが初めての【マナスポット】。

 円の中には入らず、しかし興味深そうにその中を覗き込んでいる。



「ですねぇ~。……どんな感じなんです? 【マナスポット】に入るって」 

 

 

 一方で水間さんは、どんなものかわからず若干ビビっているような様子だ。

 それはまるで初めての注射前に、経験済みの人から痛くない意見を求めるような表情だった。



「ん~申し訳ありませんカナデ様。私はあまり実感がありませんでしたので、ご期待に添えるようなことは何も言えませんね」


「私もソルアと同じく。ごめんなさいね、カナデ。……マスターはちゃんと実益もあったらしいけど」   



 経験者たるソルア、アトリの言を受け。

 水間さんの視線がこちらへ向く。


 更に来宮さん、そして久代さんも遅れて俺を見てきた。

 口には出さなかったものの、二人も気になったらしい。


 ……ふむ。



「――入ってみな、飛ぶぞ」



 文字通り意識がね!


 ……まあそれは俺だけだと思うけど。

 さっきの仕返しも含めた、ちょっとした悪戯いたずらだ。


 

「えっ、嘘っ、何がですか!? ――あっ! ……むぅ~お兄さん、からかいましたね!?」


 

 オロオロしたのは一瞬。

 直ぐに水間さんには見破られてしまった。

 

 ……でも頬膨らませてる水間さんの姿は非常に可愛らしく、普通に美少女中学生のそれだ。


 1階で即退場した、自称“水間さんのクラスメイト”君なんてのもいたし。

 やっぱりポテンシャルは、久代さんや来宮さんにも負けないものがあるんだろう。



 

「まっ、どういう反応があるかは人それぞれの可能性があるから。ただ少なくとも悪いことが起きるわけじゃない。経験してみるのが一番だろう」



 それで腹を括ったのか。

 水間さんをはじめ、他に質問が上がることはなくなった。


 

「大丈夫? ……よしっ、じゃあ行こう――」



 そうして全員で揃って、【マナスポット】へと足を踏み入れた。



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「んっ――」


「わっ、凄い!」


「おおっ! 力が、力が溢れてきますよ!」     

  


 早速、久代さん達もその効果を実感しているみたいだ。

 意識を失うような様子もなく、順調に進んでいるらしい。 



「わっ、あっ、えっ、な、何です!? これ、体の内側が、凄く熱い、です!!」


「フフッ、大丈夫ですよリーユ。落ち着いて、ゆっくり、少しずつ受け入れていきましょう」


「……私も昨日、リーユみたいに最初だけは実感が持てたんだけど。その後はあまり変化が感じられなかったのよね……」

 

 

 リーユ達も【マナスポット】のエネルギーを取り込み始めたようだ。

 ……この後は注意しておかないとな。



「さて――」



 自分の体へと意識を向ける。

 すると直ぐに【マナスポット】の恩恵を実感した。


 内へと入って来たエネルギーが、全身にかけられた限界を物凄い速さで破壊・再構築していくのが分かる。



 そして――




<レベルアップ! ――Lv.18→Lv.19になりました。 詳細:HP+2(冒険者 →+3) (魔術師 →MP+2) 筋力+1 (冒険者 →耐久+1) (魔術師 →魔力+2) (魔術師 →魔法耐久+1) 器用+1 容量+1(ガチャ師 +1→+3)>  


<レベルアップ! ――Lv.19→Lv.20になりました。 詳細:HP+2(冒険者 →+3) (魔術師 →MP+2) 筋力+1 (冒険者 →耐久+1) (魔術師 →魔力+2) (魔術師 →魔法耐久+1) 器用+1 容量+1(ガチャ師 +1→+3)>  


<レベルアップ! ――Lv.20→Lv.21になりました。 詳細:HP+2(冒険者 →+3) (魔術師 →MP+2) 筋力+1 (冒険者 →耐久+1) (魔術師 →魔力+2) (魔術師 →魔法耐久+1) 器用+1 容量+1(ガチャ師 +1→+3)>  




 お~。

 前回、昨日は4レベル上がったが、今回は3つか。


 でも、【ワールドクエスト】だけで、既に18まで上がっていたレベルが。

 さらに3つも上がったんだ。 

 レベルは上がれば上がるほど、次へと上昇させるのは難しくなる。

 そう考えると、これでも十分すぎるだろう。



   

<【索敵】レベルアップ! ――Lv.2→Lv.3になりました>



 そしてスキルの方も、次々と成長を遂げていく。


   

<【時間魔法】レベルアップ! ――Lv.1→Lv.2になりました>

   

<【操作魔法】レベルアップ! ――Lv.3→Lv.4になりました>


<【火魔法】レベルアップ! ――Lv.1→Lv.2になりました>


<【チームワーク】レベルアップ! ――Lv.1→Lv.2になりました>




「おふっ――」



 思わず、推しキャラの萌え台詞を聞いた時みたいな声が出てしまう。


 魔法関連が一気に上がってくれた。 

 中でも、切り札の一つである【時間魔法】が成長してくれたのは物凄く大きい。

 

 本当、初日に獲得したのに全然レベルが上がってくれる気配無かったから……。

 やっぱり強いスキルは、それだけレベルアップも大変なんだろう。


【ワールドクエスト】にチャレンジしてよかったと、一気に報われた感が湧いてきた。  



[ステータス]


●基礎情報


ジョブ

①ガチャ師Lv.3

②魔術師Lv.2

③冒険者Lv.1



●能力値

Lv.11→Lv.21

HP:32/47→62/77 (※パーティーレベル+10→72/87)

MP:21/69→41/89 (※パーティーレベル+17→58/106)


筋力:50→60 (※パーティーレベル+14→74) 

耐久:11→21

魔力:34→54 (※パーティーレベル+17→71)

魔法耐久13→23

器用:18→28 (※パーティーレベル+1→29)

敏捷:21 (※パーティーレベル+13→34)



容量63/65(③[●●●●●●]+④[●●●●●●]→75/77)

↓レベルアップ

容量63/95(③[●●●●●●]+④[●●●●●●]→75/107)

↓(※パーティーレベル+10 ※パーティーレベル+7は算入済み)

容量63/105(③[●●●●●●]+④[●●●●●●]→75/117)



●スキル

【異世界ガチャLv.3】

【身体強化Lv.3】→【身体強化Lv.4】

【MP上昇Lv.3】

【索敵Lv.2】→【索敵Lv.3】

【時間魔法Lv.1】→【時間魔法Lv.2】

【操作魔法Lv.3】→【操作魔法Lv.4】

【セカンドジョブ】

【状態異常耐性Lv.10】

【剣術Lv.1】

【身体硬化Lv.2】→【身体硬化Lv.3】

【HP自動再生Lv.1】

【火魔法Lv.1】→【火魔法Lv.2】

【チームワークLv.1】→【チームワークLv.2】

【魔力上昇Lv.1】

【危険察知Lv.4】 

【耐久上昇Lv.1】

【修羅属性Lv.1】


●スキル・ジョブ

【夜目】★3

【値段交渉】★3

【破壊属性】★3

【追撃】★3

【村長】★2

――――


 さっき、まだ立ち上がれない状態だった時、通知で流し見していたが。

【パーティーレベル】も久代さん達は8レベル上昇の中、俺はリーダー補正で一気に10レベル上がっていた。


 恩恵の方も無視できない上昇値になっている。

【パーティー】を組んでいる状態、組んでいない状態での差がこれほど大きくなるとは……。 



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



≪ご主人、ボクまた強くなったよ! フォンや女王蜘蛛エスツーと一緒に、これからもどんどんご主人たちのお役に立つね!≫




[魔導人形ファム 追加機能の候補一覧]

 

①視覚共有 ……10MP 取得済み○


②聴覚共有 ……10MP 取得済み○


③付与魔法 ……30MP 取得済み〇


④MP上昇Ⅱ ……10MP 取得済み○


⑤回復魔法 ……30MP 取得済み○


異空間室ディメンションスペース ……100MP


⑦フェアリーシールド ……50MP 取得済み○


⑧筋力・魔力上昇Ⅱ ……10MP 取得済み○


⑨取得済み機能 1段階レベルアップ ……各取得済み機能の性質に依存→既取得:④・⑧


⑩自敵ダメージ倍化 ……100MP ※【修羅属性】より要素獲得

 

⑪取得済み機能 1段階レベルアップ ……各取得済み機能の性質に依存(New!)




 ファムは⑪により、更に第三段階まで各性質を成長させることができるようになった。



「GLISYAAAAAAAAAA!!」


「ZYU,ZYUA!」


「おっ……お前たち、大きくなったか?」



 フォン、そして今さっき仲間になったばかりのエスツーは、分かりやすく体が一回りデカくなっていた。

 モンスターにおける体の成長は、純粋に戦闘力の上昇に直結するはずだ。 


 これで今後とも、更に活躍してくれるだろう。



「わっ、やった! レベル、5つも上がりました!」


「凄い……【ワールドクエスト】のボス討伐でもかなりレベルアップしたばかりなのに」


「エグいですねぇ……。そりゃぁ運営が“【マナスポット】? 欲しけりゃくれてやる。探せ!”って言うわけですよ」



 来宮さんたちも、その効果を肌とステータスで実感したようだ。

 さて――



「――っ!!」



 ――最後。



 やはりソルア達を見た瞬間、意識が別の空間へと飛んでいた。


 真っ暗な闇の中。

 上下左右の感覚もわからないまま、ただ自我だけはちゃんと保たれている。



「あっ――ソルアっ! アトリ、リーユ!! 無事かっ!?」

  


 呼びかけた先。

 昨日と同じように、ソルア達は生まれたままの姿で眠りについていた。


 今回はそこにリーユも加わり。

 3人は皆、全身を鎖で縛りつけられている。



「リーユも……6つ、鎖と錠があるのか」



 昨日の【マナスポット】で推測した通り。

 今日もまたそれぞれが有する星は、鎖で封印されているような形となっていた。

 

 

「っ! ――【マナスポット】のエネルギーか……!」



 突如、何の前触れもなく。

 黄緑色をしたエネルギー体が出現。

 

 前回のように、それぞれの胸元にある鎖・錠へと接近。

 接触すると、拘束していたそれらは破壊され、星が解放された。



 ソルア、アトリは残り4つ。

 リーユは今回が初めてなので残り5つとなる。



 それら全てをこなせば、3人がさらなる可能性――★6へと至れる、のか?



「うっ、眩しっ――」



 再度、激しい光に目を焼かれ。

 意識は現実の世界へと戻っていったのだった。


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