2日目

第14話 今日の方針の確認、イベントの更新、そして“あれっ、昨日も同じことなかった?”

まえがき


ここから2日目、2章の開始ですね。

投稿後、章立てをしておきます。

ちゃんと反映されてなかった場合、ご指摘いただければ幸いです。


――――――――


「う~ん、確かに。凄いエネルギー溢れてる感はあるな」


 

 食事を済ませて身支度を整えた後、改めてメールを見返す。

 メールに付属していたイメージ動画を見て、思わずそんな感想が漏れた。


“マナスポット”と文字が表示されたその下に、黄緑色をしたエネルギーの渦が動いていた。

 中心点は特に色濃く、そこに入れば大きな力を得られるのかもしれないと思わせる何かがあった。



「“マナスポット”……ですか。いかがいたしましょう? 今日はそちらを探してみますか?」



 着替え終わったソルアが今日の方針について尋ねてくる。


 シャツ一枚の姿は非常に魅力的だったが、同時に目の猛毒でもあった。 

 ……ただこの服も服で、やっぱり目のやり場には困るけどねぇ。


 本当、スカートは短いし。

 トップスはピタッと張り付いてて、体のラインが嫌でも目に入っちゃうしね。 



「ん~っと。書いてあることからすると、そんな直ぐに見つかるようなものじゃないっぽいからなぁ」



 生存者もモンスターも双方、見つけた者はいなかったとある。

 ということは、じゃあ今日から探してみようと言って、ホイホイ見つかるようなものなのか。



「多分、ヒントか、何か見つける鍵のようなものがあると思う。それが得られてからでいいんじゃないかな」


  

 この文面からすると、一発逆転のための装置というか、イベントみたいな気がする。

 だから、俺たちのように順調な場合、マナスポットを何が何でも取りに行くという緊急性は高くない。

 とりあえずは堅実に、昨日決めた方針通りで行こうと提案する。



「そうですか……わかりました。では、今日は予定通り“どらっぐすとあ”に向かう、ということでよろしいですか?」



 ソルアの言い慣れてないような可愛らしい発音に、思わず頬を緩める。



「ああ、うん。ドラッグストア。あそこなら日用品はもちろん、食料品の調達も同時にできるかもしれないから」



 名前からは医薬品関連のみを売る店のように思えるが、最近はそれ以外の販売にも力を入れている。

 さらにコンビニと比較しても安いし、品揃えも悪くない。

 

 こういうパニック物みたいな状況の場合、案外盲点じゃないかと思うのだ。

 食料調達を考える場合、先ず真っ先にスーパーやコンビニが思い浮かぶからだ。


 そして近くにあるスーパーは昨日得た情報から後回しにすべきだと判断した。

 おそらくモンスターに占領されているだろうから、手間がかかるだろうし。



「そ、そうですね、はい! ドラッグストア、ドラッグストアです! へぇぇ~お薬以外にも沢山売ってる場所なんですね!?」

 

  

 ドラッグストア、凄い復唱してくるじゃん。


 ソルアの表情には照れからくる恥じらいの色と、それを何とか覆い隠せないかとする強引さがあった。

 まるで先生を誤ってお母さんと呼んでしまった後、何とか挽回(ばんかい)の言い訳を押し通せないかとするかのような。


 そんなとても可愛らしくほっこりするソルアの意外な一面を、朝から見られたのだった。


 

□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



=========

~通常ガチャ~

毎日1回ガチャ無料!


通常1回:20Isekai

10連:200Isekai


※10連ガチャの場合、★3以上が1つ確定


==========

①~生存ログインボーナス 2日目~

1:★4確定ガチャ券


2:星絆スターズ・リンクス



※9時以降より受取り可能


==========     

②~イベント“2人目の仲間を手に入れよう!”~

異世界奴隷(女)の所有数が1人の場合、★4の異世界奴隷(女)が排出される確率が2倍にUP!



※このイベントは10連ガチャ限定

 また、2日目の12時~3日目の0時まで


==========



 おっ。

【異世界ガチャ】のイベント欄が更新されてる。



 まだ8時にもなってないから、2日目の生存ログインボーナスを受け取れるのは少しだけ先になる。


 だがこうして“2日目”という言葉を見ると、改めて1日目を生き抜いたんだという実感が湧いてきた。



 この“生存ボーナス”は文字通り、1日、また1日と生き残ったことへのご褒美なんだろう。

 だが――

 


「“★4確定ガチャ券”……昨日よりランクダウン?」



 1日目は★5確定だったのに。

 そのチグハグさに一瞬だけ気落ちしてしまう。


 だがよくよく見ると、そう悲観することもないと気づいた。



「あぁ、今回のは限定がないのか」



 昨日使ったガチャ券は“ジョブ・スキル・異世界奴隷の内のどれか”という限定があった。

 だが今回のはそれがないので、多分アイテムとか装備、その他とかもありうることになる。



「それに――」



“2:星絆スターズ・リンクス”の項目に触れてみると、詳細な説明があった。



==========

星絆スターズ・リンクス


 アイテム。

 具現化前の結晶に使用することで、★の数を一つ増やすことができる。

 ★4以下の結晶にのみ使用可能。



==========



 これを見て、全然1日目に劣っていないじゃないかと確信する。

 ★4確定ガチャ券で出た★4の結晶にも、要はこれを使えるってことだ。  


 つまり、実質★5相当ということになる。



「2日目だから1日目とはちょっと変えて趣向を凝らしたってことかな?」



 9時になるのが楽しみになってきた。



 それに、2つ目のイベントもありがたい。

 


『②~イベント“2人目の仲間を手に入れよう!”~』は、昨日正に欲しいと思っていたところにドンピシャのイベントだからだ。


 こちらは12時、正午から始まるらしい。

 


「それまでに10連を1回でも多く回せるよう、お布施のIsekaiを貯めないと……」




 そしてこのイベントで確率が上がるのは★4の異世界奴隷(女)。

 ……これもまた“(女)”限定なのか。


 もしかしたら【異世界ガチャ】のスキルの所有者の性別によって、変わるのかな?

 俺が仮に女性だったら、逆に“(男)”ってなってたのかも。


 いや、知らないけど。


 ――ってそうじゃなく。



「つまり、こっちにも“星絆スターズ・リンクス”を使う道もあり得るってことか」



 うわ~。

 ということは、★4確定ガチャ券で出た何かに使うか。

 それかこっちの異世界奴隷の子に使って★5にしてあげるか。


 今から悩むぞこれは……!


 

 ――まあ当たれば、だけどな!



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□



「ご主人様、少しだけお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」


 

 出発すべくアパートの敷地外に出る直前。

 ソルアが俺を引き留めた。

 


「えっ? 何、忘れ物? それとも――」



“トイレか?”と口にする寸前、その言葉は何とか飲み込んだ。

 流石にそれはデリカシーに欠ける。


 だが“それとも”まで言ってしまった。

 何か“忘れ物”と同等に、俺が思いついたことを言わなければ不自然になってしまう。


  

「あーっと、何か懸念事項でもあったか?」


 

 おっ、我ながらナイスな自己フォロー。

 


「あっ、いえ。懸念というか。ここで先にやっておきたいことがありまして。直ぐに終わりますので」



 良かった。

 ソルアは俺の内心の焦りには気づかなかったようだ。

 


 頷き、少し離れて待つことにする。



「ありがとうございます。……≪光よ、核となりて我を照らし、敵を撃て――≫」



 ――あっ、詠唱。



 ソルアが始めたことが、瞬時に理解できた。

 

 ソルアの足元に、光り輝く白い魔法陣が出現する。



「――【光核ライトコア】!!」



 詠唱が完成すると、ソルアの手元に光の球が形成された。

 バレーボールほどの大きさをしていて、宙にとどまり続けている。



「ソルア……それ、魔法か?」


 

 もちろんこのような現象は魔法以外にないだろうと思いつつも、ソルアに確認をしていた。



「はい。昨日のレベルアップのおかげで、今朝使えるように戻ってました。戦闘を補助する光魔法です」



 しばらくは存在し続けてくれるらしいので、事前に創り出したということだった。


 どのような感じの補助魔法かはまだわからないが、前衛もこなせてなおかつ魔法も使えるようになった。

 ソルアはどんどん頼もしくなっていくな……。


 で、でも大丈夫。

 俺だって、何と言っても【時間魔法】があるんだからね!

 それに昨日の一件で【操作魔法】の使い勝手の良さというか、戦闘における汎用性の高さに気づけた。



 フフッ、ソルアよ。

 強くなったのは何もお前だけじゃないんだぜ?




「あっ、モンスターだ――」

   


 そうして改めて出発すると、早速【索敵】に敵の存在が引っ掛かった。

      


「3体か……いきなり複数か。面倒だな」


 

 だが昨日のうちにそれは経験済みだ。

 こっちも強くなっている分、むしろ気持ちにはいくらか余裕もできていた。



「3体……では、私がまず行ってきます。ご主人様はお待ちください」



 だが、ソルアに出鼻をくじかれた。

  


「えっ? あっ、その、え、いいの?」


 

 いきなりのことに驚き、戸惑いながら確認する。

 ソルアはしかし、なんの気負いもなく。



「はい。そのための魔法でもありますから。では――」



 笑顔でソルアは武器を構え、サッと駆け出して行った。

 うわっ、本当に行くんだ。

 

 

「BAAAA!」


  

 相手はデカいコウモリのモンスター。

 ジャイアントバットだ。


 大きな鳥くらいにはデカく、道端で亡くなっていた人の死骸を食らっていた。



「――ふんっ!」



 それがソルアの奇襲により一匹、見事に切り裂かれる。

 


「BUAAAA!?」


 

 残り2体がそれに気づき、空へ飛んで逃げようと試みる。

 


「――【フラッシュ】!」



 それを、ソルアは見逃さない。

 先程創り出した光核ライトコアが、ソルアの言葉に答えるようにして閃光を放つ。

 

 それを受けたコウモリは雷に打たれたように地面へと落下した。



「【チャージ】!」



 今度はコアから放たれる光が、ソルアの“ただの剣”へと吸収されていく。

 剣はまるで光を纏ったかのように光り輝いていた。



「はぁぁっ!」



 大きく横なぎにした一撃。

 まばゆい光線がそこに走ったかのように、2体のコウモリは一瞬にして真っ二つに切断されたのだった。



<所有奴隷“ソルア”がジャイアントバットを討伐しました。25Isekaiを獲得しました>


<所有奴隷“ソルア”がジャイアントバットを討伐しました。25Isekaiを獲得しました>


<所有奴隷“ソルア”がジャイアントバットを討伐しました。25Isekaiを獲得しました>




「ふぅぅ……」



 戦闘の終了を告げる合図のようにして、光の核がどんどん萎(しぼ)んでいく。

 というか、発動した分だけその大きさを縮めていたようにも見えた。



「…………」




 そして俺は、昨日思ったことを再び、ここでも思うことになった。




 ――あれ、俺、いる?



     

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る