第9話 商品の購入、ソルアやめて! そして称号の獲得



「この【施設】は最初から利用可能なのか……」



 アパートの“宿屋”の時は、コボルトに占拠されていて最初は利用できなかったらしい。

 だがこのパソコン教室の“商店”は、解放の過程を踏まずとも使用できた。



 まあそもそも、魔物モンスターがここにはいないっぽいしね。



[施設 商店:○○パソコン教室]


①MPバッテリー(小):100Isekai ……販売中


②MPバッテリー(小):100Isekai ……販売中


容量キャパシティー保存ディスク:100Isekai ……販売中


容量キャパシティー保存ディスク:100Isekai ……販売中




「①と②、③と④は同じ商品だろうから、実質2種類か……」




<“①MPバッテリー(小):100Isekai” 30MP分が入っているクリスタル。これを使用すると、クリスタルからMPをチャージすることができる。クリスタルのMPは1日経つとMaxまで回復します>



 タッチすると、商品の説明文が表示される。

 それと同時に、縦に長い延べ棒みたいな水晶の絵も現れた。


 これが商品のイメージ画像ということだろう。



「バッテリー……つまり、スマホのモバイルチャージみたいなもんか?」


 

 コンビニや駅中で最近見かけるようになったあれだ。

 有料だが、スマホの充電に困ったとき、モバイルバッテリーを貸し出してくれるサービスのやつ。



 MPバッテリーを購入すれば、MPをここの施設で回復できる。

 そんなイメージかな。



<“③容量キャパシティー保存ディスク:100Isekai” 容量キャパシティーの役割を担ってくれる魔石。一つにつき容量3の空きが使用できるようになります>



 同じように説明文が現れ、その横にはイメージ画像もセットで出てきた。

 真っ白でツルツルとした輝きを放つ、円形の石。


 その石の周りには、空き容量分を示すように3つの白い丸が浮いていた。



 [〇〇〇]



「? どういうことだ? これを購入すると、どうなるの?」


「あまり難しく考える必要はないかと。おそらく容量が3増えるのと同じ効果なのではないですか?」



 ソルアにそう言われて、それもそうかと納得する。

 違ってたら違ってたで、まあいいや。



「とりあえず……1個ずつ買ってみるか」



 200Isekai使って10連を回した時と同様。

 試してみないと分からないので、ひとまずそれだけ購入することにした。



 ①と③を長押し。

 すると、その二つが選択された状態となり、右側に購入を決定するボタンが浮かび上がる。



<①と③を合わせて購入しますか? 計:200Isekai はい/いいえ ※所持金:954Isekai>

 

  

 はいを選択。

 購入が確定すると、商品が出現する前に新たな画面が出てきた。



<当【施設】の商品をご購入いただきありがとうございます。他の生存者サバイバーの方に売却済みであることを示すため、生存者サバイバーネームをご記入ください>



「“生存者”ネーム?」 



 目の前にキーボード画面が現れる。

 よくわからないが、対戦ゲームでのプレイヤーネーム的なものかと判断。


 こういう場合、本名は避けた方がいいよなぁ……。



「じゃあ“TOKI”っと……」



 直近で【時間魔法】との縁ができたためその“とき”から。

 また名前の“幸翔ゆきと”を逆から読んで、その2文字が“とき”だから。


 すると、これで決定でいいか確認される。


 はいはい、OKOKっと。



[施設 商店:○○パソコン教室]


①MPバッテリー(小):100Isekai ……売却済み TOKI


②MPバッテリー(小):100Isekai ……販売中


容量キャパシティー保存ディスク:100Isekai ……売却済み TOKI


容量キャパシティー保存ディスク:100Isekai ……販売中

 



「あぁぁ~なるほど。こういう感じになるのか」



 施設の商品欄が更新された。

 一目でさっきとの違いがわかり、今求められたことの意味を理解する。



「それにちゃんと①も③も“売却済み”になってる。よしよし」


 

 それを確認した後、改めて購入商品を試してみることに。



「まずはMPバッテリーから、っと……」



 使い方は今までの【スキルの種】やガチャの結晶と同様、頭で既に理解していた。

 念じると、さっきイメージ画像で出てきた水色のクリスタルが手元に出現。

 


[①MPバッテリー(小):30/30 MAX充電まで残り24:00……]


 

 クリスタルの上に、詳細な情報が表示される。

 なるほど……。

 

 で、今の俺のMPはここに来るまでの【索敵】使用で8/13。

 これが、MPバッテリーの使用で回復できるのかな……。



「これを握って念じれば……おっ?」



 クリスタルがほのかに発光を始める。

 すると、クリスタルに触れている手のひらに熱を感じた。


 そこから温かなエネルギーが、自分の体に入ってくるのが実感できる。



 MP:9/13



「おぉっ!」



 MP:10/13



「おおぉっ!」



 MP:11/13



「おおおぉっ!」  

 


 時の経過とともに、自分のMPがどんどん回復していった。

 そして5分としないうちに、俺のMPはMAX、13/13に。



[①MPバッテリー(小):25/30 MAX充電まで残り23:54……]  



 そして俺のMPを回復した分だけ、バッテリーの方も減っていた。



「ソルアも使ってみ!」


「えっ? はい。ですが、よろしいのですか?」



 少し躊躇ためらうソルアを促し、バッテリーを使ってみてもらった。



「あっ――んっ、あぁっ、んふぅ……凄い、回復、してるのが、わかります」



 ――いや、分かるのは良いけど、その声!!    



「あんっ! ご主人様っ、棒から、熱い、何かが、入ってきて――」


 

 だから間違ってはないけど、何でピンポイントにそういう表現になるの!?

 

 ソルアさん、滅茶苦茶色っぽい声出すじゃん、本当やめて!

 こっちは婿むこ入り前だよ、興奮しちゃったらどう責任とってくれんの!?  



[①MPバッテリー(小):11/30 MAX充電まで残り23:43……]  



 悶々とした気持ちとどう折り合いをつけるか悩んでいる間に、ソルアもバッチリ全回復したようだった。

 

 

 ……ソルア、あんなえっちい声出るんだなぁ。

 本人は無自覚だったようだけどね!



□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□ 


[ステータス]


●能力値


容量キャパシティー:23/28([〇〇〇]→23/31)



「あっ、本当だ。3増えてるわ」



 ステータスを見て、容量キャパシティー保存ディスクの効果を実感する。

 この“[〇〇〇]”が、追加された容量の空きを意味するのだろう。



<使用不可。【時間魔法】習得に必要な容量キャパシティーが後“2”足りません>



「嘘ッ、後“2”で行けるの!?」



 再び【時間魔法】の結晶を使用したところ、変化があった。

 その違いに、さっきとは別の大きな興奮がドバドバと湧きあがってくる。


 つまり【時間魔法】習得に必要な容量は“10”だったってことか。



「ということは、だ……」

 

 

 ――もう一つ、④も買えば行けんじゃね?



 それに②だって買っておいて損はない。

 要はMP限定だが、こっち方面の遠征の時に中継点・休憩所ができるということだ。


 俺の【索敵】もそうだし、ソルアの戦闘スタイルもMP消費がつきものだ。

 二つあればその分だけ保険になるだろう。


 

 また、今まで20回分ガチャを回して、容量が出たのは2つ。

 つまり200Isekaiで+2だった。


 容量保存は100Isekaiで+3と同じ扱い。

 そう考えるとかなりお買い得だといえる。



「よし、買っておこう!」



 まだ手持ちのIsekaiに余裕があることもあって、全部を購入してしまうことに決める。

 残りが554Isekaiに。


 それと同時に、すべてを購入したことを祝すかのように複数の軽快な音がした。   



[施設 商店:○○パソコン教室]


①MPバッテリー(小):100Isekai ……売却済み TOKI


②MPバッテリー(小):100Isekai ……売却済み TOKI


容量キャパシティー)保存《ディスク:100Isekai ……売却済み TOKI


容量キャパシティー保存ディスク:100Isekai ……売却済み TOKI 



<――おめでとうございます! 一つの【施設】の商品を買い占めることに成功しました!>


<新たなメールを受信しました。新着メール:2件> 



「おお!?」



 連続して画面が重なるように現れる。

 いきなりのことに驚き、思わず声が出た。



<“施設 商店:〇〇パソコン教室”買占めの特典……買占め成功者のみ購入可能な商品が新たに入荷します>



 すると、何もなかったはずの④の下に、新しい項目が出現した。

 


[施設 商店:○○パソコン教室]



⑤【操作魔法】スキル:400Isekai ……販売中 ※TOKIのみ閲覧・購入可能




□◆□◆ ◇■◇■  ■◇■◇ ◆□◆□ 



「凄っ……」



 色々あり過ぎてもうそれしか言葉がでなかった。

 ……とりあえず一つ一つ片づけていくことにするか。



「この新しく出た“⑤”は、メールの件とは別ってことでいいんだよな?」



 未だ2件の新着メールは開けていない。

 つまりメールとは別件と思っていい。


【施設】に売ってある商品を、一人の生存者サバイバーが全部購入できたら得られる、ゲームの仕様。

 要はこれも特権・ご褒美ってことだろう。



「で、それが【操作魔法】……パソコン教室にある【施設】だからかね?」



 よくよく考えると、MPバッテリーも容量保存も、何となくパソコン教室から連想できそうな名称ではある。


 パソコンも“操作”って概念とは親和性あるしね。



「買うかどうかは、今は保留で――メールを先に見るか」



 多分、このタイミングで来るってことは、だ。

 宿屋の件の時と同様――



=====


4 差出人:【異世界ゲーム】運営


件名:ワールドクエスト“一番最初に【施設】関連のクエストを複数達成”のクリア報酬贈呈


=====


3 差出人:【異世界ゲーム】運営        


件名:ワールドクエスト“一番最初に【施設】の商品買占め”のクリア報酬贈呈


=====



 ほらっ、やっぱり。

 運営だ。



 チラッと視界に入った“クリア報酬贈呈”という大きなプラスの響きの言葉にも、素直に喜べなかった。


 それをもたらしてくるのがこの状況を生み出した元凶となれば、複雑な感情も致し方ないだろう。



 

=====


3 差出人:【異世界ゲーム】運営


件名:ワールドクエスト“一番最初に【施設】の商品買占め”のクリア報酬贈呈



おめでとうございます。

【異世界ゲーム】開始後、一番最初に【施設】の商品を単独で買い占められました。


クエストのクリア報酬を贈呈します。

ゲームでの生き残りにご活用ください。



報酬:

【施設利用カード1000Isekai分】 ■


=====



「【施設利用カード】……」



【ジョブの種】の時みたいに“■”のボタンをタッチ。

 すると、銀色のカードが宙から落ちてきた。




<【施設利用カード1000Isekai分】:アイテム。施設でのみ利用可能。1000Isekai分だけ、このカードで支払いを代替できる>



「あぁぁ~なるほど」



 図書カードか、QUOカードみたいなもんね。

 それの【施設】版。

   


「あっ。じゃあ【操作魔法】もこれで買えばいいんじゃね?」



 まあ今直ぐじゃなくて、メールの確認を終えてからでいいか。




=====


4 差出人:【異世界ゲーム】運営


件名:ワールドクエスト“一番最初に【施設】関連のクエストを複数達成”のクリア報酬贈呈



おめでとうございます。

【異世界ゲーム】開始後、一番最初に【施設】に関連するクエストを2つクリアなさいました。


そんな施設大好きな生存者サバイバー様にピッタリの報酬を贈呈いたします。

ゲームでの生き残りに大きく貢献してくれることでしょう。



報酬:

 称号:施設の王


=====



 誰が“施設大好き”だ!

 利用すればサバイバルに有利だから使ってるだけ!

 

 なんだこの運営。


 ちょくちょくイラっとさせる言葉入れてくるな……。




<“施設の王”:称号。所有しているだけで効果がある。買占めに成功した施設の特典に、“効果2倍 確定”が追加される>



 その説明文を読むか読まないかの時、ステータスやMPバッテリーに次々と変化が起こった。




[①MPバッテリー(小):41/60 MAX充電まで残り23:30……]  

 

[②MPバッテリー(小):60/60 MAX充電まで残り24:00……] 



[ステータス]


●能力値


容量キャパシティー:23/28(③[〇〇〇〇〇〇]+④[〇〇〇〇〇〇]→23/40)




「マジで全部倍になってる……」



 得た報酬、称号の効果に、流石にドン引きするのだった。 

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