第35話

いい加減起きてやるか、と思ったその次の瞬間。

パカン、といい音が響くと共に後頭部に痛みが。

「はよ起きろや」

フライパンで後頭部を殴られた。

「いや待ってどこから出したそのフライパン」

「起きれんじゃん、ぐだぐだするな。それじゃさっさか行くぞ」

「置いてかないでよ質問を、聞きたいこと色々あるのに」

意外と様になるフライパンを肩に置くその姿、前世は元ヤンかな?

「んなもん歩きながらだが?長ぇんだよ」

「なにがぁ?いいじゃんゆっくりで。スローライフでいこうよ。この世界での私のモットーというか基盤というか?今、改めて決めた」

「あそ、で?」

「で?とは?」

「これからどうすんのかって、何がしたい?」

「なぜ今それを聞くの?地面に叩きつけておいて。本当だったらあのままあそこでぐーたらしてたかったよ…」

「それは出来ない、あそこはあの時限定の仮住まいだからな。ずっとはいれない」

初めて知ったわそんなの…と少し脹れてみたりもしたけれどまるで突っ込まれない悲しみ。

「ん?じゃああそこにいた両親は?どうなるのこれから」

「さあ?何を選ぶかは本人次第だから俺には知ったこっちゃないよ」

「初耳なんですが?」

「甘ったれるなよ、何でもかんでも説明があると思ったら大間違いだ。自分で考え自分で作る、掴み取る。それがこの世界のルール、覚えておけよ」

「掴み取るって言われても…じゃあスローライフを夢みてるけどそれも?」

「もちろん、誰にも干渉されず自堕落に暮らしたいならゼロから始めるんだよ。安全の確保に衣食住と死ぬまで暮らしきれるくらいのものをな」

「…ええ…理不尽……」

「だがそれが世界だ、仕方の無いことなんだよ。みんなそうしてきた、はるか昔からな。」

「じゃあなんかすごい能力的なのは?そういうのないの?私が知ってるやつはなにか貰ってたり優遇されてたりするんだけど」

「もちろんそんなものもねぇよ、言ったろ?ゼロからって。だいたいそんなもん最初からもらって何が楽しいんだ?」

厳しいなぁ、世界って。

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