第15話
どうしても言えなかった、自分を産み育ててくれた父母を前にしてなぜ自分が死んだのか。
一向に口から言葉は出ず喉も乾いて張り付いていた。まるで自分の身体が言ってはならないと拒絶しているかのようだった。視界が歪み心音がやたらとうるさく轟く。
やがて自分が立っているのか地面に倒れているのか、はたまた宙に浮いているのか、平衡感覚が無くなった。呼吸もだんだんに荒くなる。
(言わなきゃ)けれど何もできなかった。
「落ち着きな」
優しく暖かいものがほっぺたにそっと触れる。
その瞬間自分を取り巻いていた嫌なものがスッと消えた。
三度瞬きをした、目の前に笑みを浮かべた母がいた。
「あ」
絞りだした音はたったの一音、けれどその一音を皮切りに涙がとめどなく溢れ落ちる。
(なんで私はあんなことをしたのだろう、もっと頼ればよかった、相談すればよかった、強がらないで素直になればよかった、助けてって言えば、叫べばよかった。)嗚咽と共に後悔が滲む。
「ごめんあさぃ…ごべっんなざい…」
そのまま崩れ落ち泣きじゃくった
何の説明もできていないのに、言わなければならないことがあるのに、その義務すら放棄して逃げたのに、それでも母は優しく抱きしめてくれた、頭をなでてくれた。
それでも父は、背中をさすってくれた、優しい言葉を、私が泣き止むまでかけ続けてくれた。
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