七度神社
カニカマもどき
ある神社の境内で
おや、いらっしゃい。
あなた、私が見えるのですか。
これは珍しい。
ええ、ええ。
私は、この神社の神様をやらせてもらっている者ですが。
して、そういうあなたは。
私の仕事を見に来た?
なんだか変わったことをしているようだからって?
いやいや。変わったことなど何もありませんよ。
それでもよければ、見ていただくのは別に構いませんが。
おや、ちょうど参拝客が来ましたね。
では私の仕事ぶりをご覧いただきましょう。
このひょうたんを、彼女の頭の上でこうゆらゆらして……
ほい、出来た。
彼女の中にあった悪い”気”は、ひょうたんに封じられました。
この調子で、どんどんいきましょう。
次の人の悪い気も、ひょうたんで吸収。
その次の人も。
そのまた次の人も。
吸収。吸収。
そして七人目の人に、悪い気をまとめて放出。
え、何? どうかしましたか、急に大声だして。
ええ。いま私は悪い気を彼に注ぎ込みましたが。
彼の身には、いまに不幸が訪れますが。
それが何か。
ええ、ええ。ああ、そういう。
まあ、あなたの仰ることも分からなくはないですよ。
全ての参拝客から、悪い気を吸い取ってあげればいいと。
七人目に放出する意味が分からないと。
しかしねえ、そういうわけにもいかんのですよ。
神様には人間に出来ないことが出来るけど、だからといって万能じゃあない。
悪い気をひょうたんに溜め続けることは出来ないのですよ、これが。
誰かが幸福になれば、その分、誰かが不幸になる。
うまい話には裏がある。
これ、この世の摂理。
神様だって逆らえない。
だからね。勝負運の神様とよばれている私は、神社に参拝してくれた人のうち、七人中六人には、幸運を与えてあげる。
その代わり、残りの一人には、七倍不幸になってもらう。
そうしないと全体の釣り合いがとれなくなっちゃうから。
悪い話じゃないでしょう?
不幸になる確率は、たった七分の一。
それにほら、ここに来る参拝客は、
これも一種の博打として、楽しんでもらえたら。
とまあ、これが私の仕事なわけですが。
それでどうです?
よかったら、あなたも参拝していかれては?
七度神社 カニカマもどき @wasabi014
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