第5話・悪魔付きの少女
ケイゴと暫く話していると、壇上に立派な髭を携えた白髪のご老人が上がってきた。
「ゴホン、静かにせい。小童ども。ここは天下の貴族院学園だぞ。まだ、7歳で遊びたい喋りたいというのも分からんでもないが、貴族たる者常に平民に対して見本となり、優れなさい。自分が貴族という誇りを持つのじゃ。分かったか。そもそも貴族というのは、神から領土を支配するスキル。領土支配のスキルを授けられたご先祖様が領土支配のスキルを使い国を作った。それが始まりじゃ。そして、領土支配のスキルはスキル所有者の血縁者にしか授けることが出来ない。だからこの国の貴族には必ず神からスキルを授けられた選ばれし者がいる、そう、我々貴族は選ばれているのじゃ、しかし、最近の貴族はそのことを忘れ平民如きと結婚するものや、平民のために汗水たらし働き過労で倒れる者。平民に反逆されて平民に殺される者、クズばかりだ。もちろん平民をないがしろにしてはならないが小童共はもっと貴族としての自覚を持った方がいいい。貴族というのは選ばれた存在だ。貴族というのを誇りに持て、貴族であるのだから、貴族として貴族であれ。我が学園は選ばれた貴族が入る学校である。もちろん一部優れた平民もいるが・・・・・・・・
どこの世界でも校長先生の話はつまらない上にクソ長いな、早く終わらないかな、なんて思いながら、話半分で聞いていたら、いきなり隣にいた女子生徒が心臓のあたりを抑えながら苦しみだした。
「どうした、苦しそうだが大丈夫か?保健室行くか?」
小声で彼女にそう、問いかけたら。
「私から離れて」
「いや、いきなr」
ドン
殴られた。いや、可視化するほどの魔力を叩きつけられた。
「死ね、死ね、死ね、全て壊れてしまえ」
隣にいた女子生徒から真っ黒でおぞましい魔力が発しながら絶叫している。何だこれ?
凄いな勇者といたからいきなるトラブル起きたよ。主人公補正凄すぎるって。
「ケイゴ、これが何か分かるか?」
「ああ。分かるぞ。この症状は悪魔付きだ」
「いや、なんだ悪魔付きって教えてk」
殴られた。
自分でもいうのもあれだが7年間の訓練でかなり身体能力の高い自信がある。そんでもってしっかりと腕でガードをしているおかげでそんなには痛くないけど。痛くないのだが、なんか凄い殴って来る。
しかも、ずっと死ねって叫びながら殴って来る。あんまり女の子に手を出すのは好きじゃないけどフルボッコ、いや原形が分からなくなる程ぶち壊していいのかな?
「すまん、リクトそのまま1分耐えてくれ、俺の魔法で何とかする」
「分かった。だが、早くしてくれ左程痛くはないが、女の子にずっと死ねって言われ続けるのは精神的にも何か来る。ダメージがでかい」
つーか、周りの人ほとんど逃げてんじゃん。
それに、先生も俺らガン無視で公爵家や王家の方々を逃がしているし。ふざけんな、助けろよ、先生だろ?
俺とケイゴが強くなかったら伯爵家の人間がかなり殺されてるぞ。大問題だぞそれ?分かってんのか?
まじでこの学校の先生のことは絶対これから信用しないわ。クソ共が。本当に殺意が湧くな。
まあいいや。ここは一旦我慢してケイゴを信じて耐えるか。
そうして暫く耐えること1分。
「リクト、準備が出来た。避けろ」
「分かったケイゴ」
俺はそう叫んで右方向に転がるようにして距離をとる。
「浄化魔法・神聖魔法・封印魔法・複合・悪魔強制浄化封印」
ケイゴの手から光り輝くエネルギー砲のようなものが放たれる。
それは女子生徒の身体に当たると同時に黒色の靄みたいなものが彼女の身体から滲み出てそれを光が包み込んでいき、そのまま光が集まって小さい球のようなものになってコロンと落ちた。
「封印成功」
「ケイゴ今のは一体なんだ?」
「ああ、すまん、今のは悪魔付き。俺が女神様から与えられた使命の一つだ。悪魔付きってのはこの世界にいる悪魔が人の身体に入り込み人をおかしくさせて、全てを破壊する化け物にしてしまう恐ろしい呪いのようなものだ。
この悪魔付きは普通はそうそう起こらないものなんだが悪魔王っていう化け物が誕生したせいで悪魔が活発化してよく起こるようになったんだ。
だから俺はそれを解決するために女神様に勇者として呼ばれたんだ。まあ、他にも邪竜王とか凶魔王とか死霊王とかナニカルマとか禁忌の化け物とか破壊の魔王とか、いろいろ人類に敵対する化け物を倒さないといけないんだけど」
「そうなのか、それは、なんか、うん頑張って」
俺絶対倒される側じゃないかと思ったが言わないでおこう。
というか禁忌の化け物って俺な気がするし、何ですか俺はケイゴと対立する運命何ですか?
魔王側とかについてってこれフラグだな。忘れよう。それに少なくとも今は人間をそこまで怨んではいないし絶望もしてないからな。そんな勇者に殺されるようなことをするつもりはないわ。多分だけど。・・・多分だけど。ヤベエ、なんか嫌なフラグを立てた気がする。
「リクト、俺は今から悪魔付きの被害にあった彼女のケアをする。すまないが誰でもいいから先生を呼んで事情を説明せてくれないか。この学校の先生は一応全員俺が勇者って知っているから。多分大丈夫なはずだ」
「分かった。じゃあ、先生呼んでくるわ」
俺は駆け足で逃げたもとい避難したであろう先生の所に向かった。
しかし、先生方はケイゴが勇者って知っていたのか、だから、あの時誰も手出さなかったのか。なるほどね。
・・・いや。それでも俺という一般人がいて無視は酷くね?まあいいけど気にする方が面倒くさいし。
お、先生見っけ、ちょっとけだるそうにしているがかなりの魔力を感じるダンディなオジサンだ。
俺はそのダンディなオジサンに事の説明を軽くしてついてきてもらう。
そこからは、かなりとんとん拍子に話が進んでいった。
悪魔付きにあった女子生徒の身柄確保。及び精神ケア。始業式をもう一度やり直すことの決定。
今回の件に対しての口外することの禁止と報奨金(口止め料含む)。俺の強さが認められてケイゴと同じSクラスへの編入決定等々。と、まあ、かなり綺麗に決まってた。
ほんで、諸々終わって俺は今どうしているかというと、最悪最恐の天敵ともいえる正教会に呼ばれています。
マジで一切の冗談抜きにして俺の穢れたというか禁忌で埋め尽くされた魔力のせいか正教会にいるだけで息苦しいといか辛い。誰か助けて。
つーか、何で俺は正教会に呼ばれたんだっけ。えっと、確か、今回の問題を終えて、ケイゴが俺を自分と同じ転生者だってゲロっちゃて、呼ばれたんだな。
・・・・・・
鑑定された一発処刑。
・・・・・・
ハードモード過ぎるでしょ。
「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。私はただ、勇者様であらせられるケイゴ様の同郷の者と聞きご挨拶に貴方を呼んだだけですから。もちろん、本来であれば私の方からお会いに行くべきなのですが、何分立場という物がありまして。このような形を取らせてもらいました」
いきなり目の前に人がいた。パッと見は初老を迎えたぐらいのお爺ちゃんだ。
ただ俺はそのお爺ちゃんがひたすらに怖かった。
怖い、怖い、怖い、恐ろしいまでの魔力に優しそうに見えるのに虚無感を感じる目、ゆったりとしたローブを着ていて地面に裾がついているのに、この人が話しかけるまで一切音も聞こえなければ、魔力も感じなかったという点。
化け物という言葉すら生ぬるく感じるナニカだ。怖すぎる。
「あの、え、ああ、こんにちは、私は、あ、ハア、エルホンス・モトイ・ハア、リク、ト、と申し、ます」
上手く喋れない。声を出せない。息が上手くできなくなってきた。苦しい。怖い。吐きそう。
クソ、何で俺がこんな目に合ってるんだよ。本当にマジで。クソがふざけるな。
「あのひよっこ勇者と違って君は実力差が分かるようだね。これは、まだ貴方の方が見込みがありそうだ。じゃあ、帰っていいよ。それと君の魂は今はまだ悪事を働いていない。むしろ悪党を殺している綺麗な魂だね、ずっとその綺麗な魂でいるのであればまあ生かしておいてあげるよ」
そうお爺ちゃんが言った瞬間、一瞬で俺の目の前から消えた。その瞬間苦しかったのが大分楽になる。
「あれは一体誰だったんだ、いや、考えるのは止そう。精神衛生上悪い気がする。
今度ケイゴにあった時に聞けばいい、それよりも早く家に帰って訓練の続きをしよう。俺はまだまだ弱い。こんな化け物がいるんだ。俺はもっともっと強くならなければならないな。強くなって強くなって。何があっても自分の身を守れるようにしよう」
俺は強く強くそう決心した。
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