第4話・勇者との邂逅

 俺が初めて人を殺してから3年と少しが過ぎ。俺は7歳になった。そう、学校に通える7歳になったのだ。


 それまでまあいろいろあった。正妻の死によって伯爵家は大混乱、公爵家の当主はそれはもう盛大にブちぎれて、犯人探しにいくつかの犯罪組織を壊滅させたらしい、最終的に部下の一人が適当な犯罪者に罪を擦り付けて処刑させて解決させたけど。

 部下の人もあの怒り狂う公爵様を早く沈めたかったのだろう。あの怒り方はちょっと恐怖する者があった。

 いやでも、どんだけあの人怨まれてたんだか、物凄い数の候補者リストがあったからな。

 部下の人のほとんどがいつかそうなると思ってた。とか、ざまあみろ。とか自業自得だ。とか当然の報いだとか。割と好き放題言ってたし。

 うん殺して正解だな。俺は良いことをした。素晴らしい素晴らしい。


 その後、公爵様は自分の娘を殺した、(本当は違うんだけど)犯罪者を憎むようになり。犯罪者殺しの公爵という2つ名が付くぐらい犯罪者を殺し始めた。まあ、犠牲になっているのは犯罪者だし。特に罪悪感は感じない。

 しかも非常に面白いことに、殺した犯罪者の中にかなり大規模の国家転覆を図ってた貴族との繋がりを表す書類が見つかり国王陛下から表彰されて、領地が増えたらしい。

 ついでに部下たちも前よりついていくようになり、人望も上がったらしい。いや~、結果オーライだな。

 俺のおかげでこの国が救われたようなものだな。実質俺はこの国の救世主ってね。知らんけど。


 ほんで、俺の父親は公爵様が犯罪者殺しに夢中で干渉しなくなったので、しめしめと男爵家のご令嬢(美人)を正妻にして、側室を何人も作って日々大人のパーティーをしてやがる。本当に腐ってるわ。


 でも、ありがたいことに、というか、予想通り跡取りがいないという問題回避のために俺を長男として出してくれた。

 そっから家庭教師をつけて、様々なことをやらしてもらえた、というかさせられた。

 剣術・魔術・一般教養・貴族作法・などなど、もちろん、無能の方が期待もされず、いなくなってもさほど気にされなさそうなんで、落ちこぼれを演じることにしたが。

 そのかいあってか3年間の間で俺の評価はほぼ最低値、居てもいなくても変わらないという扱い、一応、国の法律で貴族の子供は学園に通わなければならないというのが定められているため、厄介払いのように学校に行かさるっていう最高の扱い。

 本来なら貴族だし使用人が付けられるが、そういうのも一切ない、いやはや落ちこぼれを演じて良かったわ。 


 これで、学園に行って一人になれる時間の大幅確保&更に一旦遠足で外さえ出れば、後は自由に外を探索して拠点を探せる。

 イエーイ、人生勝ち組だ。処刑回避確定だ。


 あ~、楽しみだ、早く学園行きたいわ。まあ。前の人生の時は学校が憂鬱で仕方がなかったけどね。いやはや人生何が起こるか分かりませんな。



 ――――――――――



 てなわけで、待ちに待った学園の入学式が始まりました。

 学園はこの家というか屋敷から、歩いて10分程度の所にあり、かなり近いです。

 落ちこぼれな俺はまあ、特に誰からもお見送りはされずに、一人で学校まで歩くことになった。

 まあ、その方が有難いから良いんだが。


「お~。ここが、外か」


 場所的にここは貴族街かな?マジで超立派な屋敷がズラーって並んでて見ててスゲーっていう馬鹿みたいな感想しか出てこないです。

 お、この俺の住んでいる屋敷の隣にある。立派なというか、うちの屋敷よりも何倍もでかく立派なのが正教会かな?

 いやー、凄いな。迫力があるわ。ただ何だろう近くにいると少し気分が悪くなるな。やっぱり俺が禁忌スキル保持者だからかな?まあ多分そうだろうね。


 おっと、早く学校に行かないとな、流石に遅刻して悪目立ちするのは嫌だからな。


 何だかんだで、色んな所に目移りしながら歩くこと15分。


「でっか」


 俺の目の前にあるのは、学園というよりも、お城だった。

 修学旅行で行ったディズニーランドのお城よりもでかい城。更にその城と同じぐらいの大きさの城が4つと、とんでもなくでかい城が1つ。

 確か、前に家庭教師に教えてもらったな。え~と、この4つある大きな城の内1つは学校、残り3つは公爵家の城。そして、一番大きい城は国王の城だったかな。


「城が学校って、とんでもないな」

「だな、本当にとんでもないと思う。流石異世界だな」

「そうだなでも、そういうもんだと割り切るしかないよな」

「そうだな、俺達はこの城で勉学に励むわけだしな。お互いに頑張ろうな」

「そうだなって、ん?待てよ?あんた誰だよ」

「あ、すまん、つい俺と全く同じことを口に出してた奴がいたんでな、気が付いたら話に入っていた」

「いや、理由じゃなくて、名前教えてくれよ」

「確かにそうだな、すまん。すまん、俺の名前はケイゴ、異世界から神様によって勇者に転生させられた者だ」

「そうか、俺の名前はリクトだよろしくなって、待て待て待て、勇者、勇者と今言ったな、というか、転生とも言ったな?しかもその名前、もしかしなくてもあんた日本人か?」

 俺は少々驚きつつそう質問をした。


「そうだ正解だ。俺は日本の高校生だったけど、車に引かれそうになっている女の子を助けた後に、コンビニで強盗に襲われて、強盗を何とか倒した後、外で悲鳴が聞こえたから慌てて向かったら通り魔がナイフを振り回していたから、それを何とか制圧して油断したところを、さっき倒した強盗に後ろから襲われ刺されて死んだ。その結果、神様に俺の善行が認められてこの世界に勇者として転生したというわけだ」


 ・・・・・・・・何かTHE主人公って感じだな。つか転生するまでの流れが超凄いな。


「凄いな、俺とは大違いだな、俺なんて神様の玩具で異世界転生だぞ、玩具だぞ玩具扱いの次元が違う」

「そうなのか、それは、まあ何というかご愁傷様です」

「だろ、にしても、お前も転生者なのか」

「ああ、まあな、これでも神様から大量のチートスキル貰ったし人生超イージモードだぜ、それに、自分でもいうのもあれだけどイケメンだしさ、もう、チヤホヤされてチヤホヤされて楽しくてしょうがない」

 確かに、多分年は同じ7歳であるはずなのに、金髪でかなり形の整った顔立ち、凛としたオーラがあり、驚くほど綺麗なルビーのような瞳、肌も白くそれなのに力強さを感じる。

 その辺の子供とは頭100個分ぐらい飛びぬけているな。


「凄い羨ましいわ、俺なんてろくなスキル貰えなかったし、容姿は、まあ、自分でいうけど、この世界じゃあ珍しい黒髪黒目で多少好奇の目で見られるし。身長も何故かあまり伸びず、明らかに皆より低いし」


 ・・・・・・・・・少し沈黙が走る。


「すまない、明らかに嫌味を言ったみたいになったな」

「いや、いいよ、気にしないでくれ。もう多少割り切ったし、それよりも早く学校行かないと始業式に遅れないか?」


「すまん、すまん、そうだな。あ、そうだ、良かったら俺と友達になってくれないか。

 この世界に来てから勇者という使命が与えられて、今はまだ大丈夫だが10歳になったら勇者だと世界に公表することになっているからな。

 身分的に対等な者がほとんどいなくなってしまう。その上、今は俺の圧倒的な力のせいで大人たちが俺を神童と弄ぶから子供たちは俺の事を怖がってあまり上手くいってないんだ。だから友達が欲しんだ。対等の関係で軽口言い合える友達がな」

 友達かあ。まあコイツは勇者だし主人公っぽそうだし、悪い奴ではないだろ。俺もやっぱり話の出来る人がいた方がいいし。なるか友達に。


「おう。いいぜ、同じ転生者同士仲良くしようや、まあ、取り敢えず今は早く学校行こう、始業式遅くれるぞ」

「あ、そうだったな。すまん、すまん、じゃあ一緒に行くか」

「そうだな」


 てくてくてくてく


 2人で久しぶりに日本の事を主にゲームや漫画の話で盛り上がりながら15分程、歩いて目的地についた。

 城の中にある始業式を行う大広場にはもうすでに半数以上が集まっており着席していたが、まだまだ来てない人は一定数おり、決して遅れたというわけではなかったと一安心しながら。指定された席を探して座る。

 席の順番は明らかな身分順で身分高い人ほど前の席、低い人ほど後ろの席という物だった。

 ただ、ラッキーなことに、ケイゴも俺と同じ伯爵家の長男だったので隣の席に座ることが出来た。

 その後、一緒に始業式が始まるまでの10分ほど喋り。ようやく、待ちに待った始業式が始まった。


 ただ、2人は気づいていない、この始業式がとんでもないことになるとは。


 ――――――――――


 主人公と勇者君は大分仲良くなってます。

 互いに、勇者君はリクトと主人公はケイゴと呼び合うほど仲良くなっています。

 まあ、二人ともそこそこオタクですし、元高校生ということで精神年齢も近いですし。

 そりゃ、仲良くなりますよ。

 因みに主人公はまだ、自分が禁忌系統スキル保持者とは勇者君に話していません。

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