第3話・初めての人殺し

 俺が転生してから3年が過ぎた。


 その間は主に魔力と身体能力向上の訓練と、質疑応答に日本の知識なんかを入れてポイントを貯めたり、自分の状況についての情報収集をしていた。

 まあ、情報収集の方は結局めんどくさくなって、質疑応答に質問して理解したんだけど。

 他には暇だったから、質疑応答でこの世界の様々な情報や物語を質問して聞いたりしてた。結構面白かったです。

 後は目がある程度見えるようになり身体もかなり動くようになってきた。

 3歳なのに訓練のおかげか、高速腹筋や腕立て伏せ反復横跳びだって出来るようになっていた。

 まあ、そんなこんなで3年間過ぎた俺には2つの問題が出来てしまった。


 1つ目は、俺の出生というか、今の状況だ。

 これが、かなり面倒くさいというか、キツイというかヤバい。

 語彙力が崩壊気味だけどそれくらい面倒な出生をしてしまってるんだ。

 マジで本当に人間の闇が出ているわ。

 まず、俺は伯爵家の長男(仮)だ。


 父親は現在伯爵家を統治している。エルホンス・コウマ・エルリという人らしい。

 その父親の結婚相手がプライドの高い公爵家の3女だ。

 そんで、その結婚はもちろん繋がりを強くするための政略結婚であり、望まぬ結婚だ。この時点でもう恐ろしいレベルで嫌な予感しかしない。

 さらに、厄介なことにその公爵家の3女がプライドが高いため、側室とか絶対に認めない&夜の営みはメチャクチャ機嫌取ってようやくらしい。 

 その為中々に子供が出来ずにいたらしい、それで父親の方も性欲が貯まってしまい・・・メイドに手を出してしまっていたらしい、というか手を出していた。中には望んでやってる人もいたけど、割と無理やり多めで。この時点で屑レベル高いが、まあやることやってるんで・・・。


 結論・メイドさんが出来ました。まあですよねって話だ。


 もちろん、普通の貴族なら、魔法で胎児だけを殺すなり、産ませて跡取りの候補とするなり色々と出来たんだが。

 ここで絡むのが、まだ、一人も子供がいないという点と、妻のプライドから絶対にメイドとの子供なんて許さないという問題だ。


 そのせいで、俺の父親(仮)はメチャクチャ悩んだ結果。秘密裏に育てて、今から10年の間に妻に子供が出来れば殺す。出来なければそのまま自分の跡取りとして育てるという。結論に至ったそうだ。


 いやそんな恐ろしい結論に至らないでくれよ。恐ろし過ぎだろ。馬鹿じゃないの。馬鹿じゃねぇの。馬鹿なの?

 それは理には叶ってるけど当事者としてはたまったものじゃないは。控えめに言ってクソだと思います。


 ほんで。まあ、俺は育てられているわけだが、俺の母親は最初は生かされてて俺を育ててくれてたけど、実はわざと父親がつけていた避妊具に穴をあけて正妻の座を狙っていたことが俺が生まれてから1年間以上立ってから発覚して即刻処刑となる。

 母親がこんなあっけなく処刑って、いやまあ倫理観が欠如してるのか、それとも俺がこの世界をゲームとして見てるのか、本当の母親は自分の前世の母だけだと思っているのか、理由は色々考えられるがとにかく、俺としては悲しくはなかったからいいけど、後々になって発覚したら復讐として親殺しされそうなヤベエことをしてる父上(笑)やわ。


 そんな訳で、今、俺を育てているのは、伯爵様もとい俺の父親の母親、ようは俺のおばあちゃんと元メイド長でおばあちゃんの親友みたいなおばあちゃんの2人に育てられているわけだ。

 2人とも、子育ては手馴れているんだが、いかんせん年なのか、かなり朦朧としていた。

 俺の名前を誰かと間違えてずっとそれはもうずっとマー坊と呼ぶし、いやマジでマー坊って誰だよ。本当に誰だよ。

 食事を作ってくれるんだが、量が異常に多かったり、(その時は空間魔法に入れている)

 量が異常に少なかったり(その時は空間魔法に入れてた奴を取り出して食べる)多少の問題はあるが上手くはやっている。


 まあもし、正妻との間に子供が生まれたら処刑確定という崖っぷちだが。その時は逃げるかいいんだけど。

 逃げるってなったら腹いせに父上(笑)と母上(笑)を殺そっかな。それくらいの嫌がらせは許されるだろう。

 まあでも多分子供は出来ないだろう。前に質疑応答に子供出来なさすぎじゃないって質問してみた結果。


 正妻がプライド高いせいで、あんな自分より身分の低く能力もさほど優れていない男の子供なんて生みたくないって避妊薬服用しているっていう中々にふざけた回答が返ってきたからな。


 まあ、それでも妊娠する可能性は多少あるらしいが。いやはや人間って怖いな。

 というよりも貴族が怖いのか?まあどちらにせよ今の所は人間の醜さ全開だわ。全開全開超全開ですな。俺の両親?だけど。草生える。

 ハア、笑ってる場合じゃないけどね。ピンチなの俺だからな。


 ほんでもって2つ目の問題が外に出れない問題だ。


 ようは1つ目の問題もあってか、俺は外に出られないようにされている。

 もちろん、外に出ようと思えば出れるがそのためには禁忌魔法をいくつか使わないといけない。そんでもって誰かに禁忌魔法を使ってるのを見られたら処刑確定だ。

 更に厄介なことに質疑応答に聞いたら、俺のいる屋敷の隣に正教会があり、その正教会に禁忌系統に絶対的優位を誇る神聖系統の使い手が7人ほどいるらしい。


 いや、マジできついって、どうするんだよ。いや本当にどうにかして外に出たい。

 一度外に出れば空間魔法で自由にその場所に行き来出来るようになるからな。

 そうすれば逃げ出すのもかなり容易になるし。クソ、どうにかしておばあちゃんを説得してってのも耄碌してて耳遠くなっているし難しい。


 いっそのこともっと力をつけて、特大の禁忌魔法でも放ってそのすきに逃げ出すか。

 いや、それも難しいな。簡単に居場所突き止められて処刑だな。

 何で俺の家に隣に正教会があるんだよ。神からの悪意フルスロットルな嫌がらせかな?


 だあ、クソ、質疑応答、教えてくれ【10歳までに俺が一切の危険な目に合うことなく外に出れる方法を教えてくれ】

 10000ポイント消費しますがよろしいですか。


 え・・・


 いけるのこの質問。いやまあ行けてるんやな。質疑応答凄すぎるやろ。いやはやそんな機能知らんかったわ。

 まあポイント消費は何か知らんけど凄く多いが、でもポイントは大量にあるし、取り敢えずやってみるか。

 というわけで教えてくれ質疑応答。


 10000ポイント消費します。


 では、呪魔法・怨魔法・死魔法の3つを複合させた魔法【お前のせいで私は不幸だ。お前は死で償え】を所有者様の父親の正妻にかけてください。

 所有者様はその女のせいで、このような部屋に閉じ込められて、その女が原因の一つで母親が殺され。

 もし、その女に存在がばれれば殺されると怖がっています。怨みとしては十分です。

 魔法が成功すれば100パーセントかけられた女は死にます。もちろん、死んだら捜査が入るでしょう。

 そうなれば、すぐにこの魔法が呪魔法と怨魔法と死魔法を使った、何かしらの怨みを持った者の犯行ということが分かります。

 元々プライドが高かったその女は、様々な人から怨みを買っていました。

 その為、片っ端から調べていくでしょう。

 ただ、誰も所有者様まではたどり着きませんし、誰も予想できません。真犯人が3歳の赤ん坊だなんてことは。

 その後は所有者様の父親は適当に自分より身分の低い妻を向かい入れた後、堂々と貴方を自分の子供として跡取りに出させるでしょう。

 因みに自分の娘を殺された公爵様はそのことについて怒り狂うでしょうが絶対に所有者様が犯人だとは辿り着きませんので問題はありません。


 ですので、これが最も良い案でしょう。


 その後は、所有者様が正式な跡取り候補になれば7歳で貴族達の通う学園に通えることとなり、その学園では近くの森に遠足に行くという行事があります。

 それを利用して遠足に行けば、いつでもその森に空間転移できるようになれます。そうすればとても楽に逃げ出せるでしょう。


 ・・・・・・


 確かに理にはかなっているし、俺の要望通りだ。その案なら俺は簡単に2つの問題が解決できる。

 というわけで決めた。


 殺すか。


 別に悩む必要なんてのは一切ない。

 俺はやらなければ殺される可能性があるわけだし。殺す相手はプライドが高く平気で人を傷つけて殺すあのクズだ。

 悩む必要なんて一切ない。殺してやる。ああ。そうだ一切の慈悲も遠慮も要らない簡単に殺せばいい。

 「呪魔法・怨魔法・死魔法・複合・【お前のせいで私は不幸だ。お前は死で償え】発動・対象・我が父の正妻】」

 そう頭の中で思い描き。俺は魔法を発動させた。1割にも満たない程度だが俺の魔力が消耗されていく。


 グギャあああああああ


 何処からか、苦しそうな女性の悲鳴が微かにだが聞こえて。止んだ。


 そして、俺は初めて人を殺した。

 ただ特に何とも思わなかった。

 あるのは、これで安全がまあ多少は確保されたかなという安心感だけだった。うん我ながら倫理観が欠如してるな。まあある意味で良い事かもな?




 ――――――――――――――――



 面白いと思って頂けたら嬉しい限りです。

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