トランプゲームで【7】と言えば……いい数字だとは限らない

信仙夜祭

小心者がカジノに行く

 今俺は、ラスベ〇スにいる。

 貯金を全額、ドルに変えて、カジノに来たのだ。


「帰りの飛行機チケットもない……。背水の陣だ」


 俺には、秘策があった。

 少し前に、とある国の頭のいい学生が、カジノで稼いだ話をテレビで見たのだ。

 最終的に、出禁にされるまで稼いだのだとか。

 計算方法があり、ネットで検索すると、その方法も詳しく記載されていた。

 そして……、訓練すること半年。


「準備は、整った……。行くぞ」


 俺は、拙い英語でカジノの扉を潜った。



 俺の向かう台は、【ブラックジャック】だ。

 このトランプゲームだけは、ディーラー(胴元)側に不利なルールがある。


 ――ディーラーは、自分の手が【17】以上になるまでカードを引かなければならない


 観客を装い、カードを数えて行く……。


『2から6までのカードが、多く出ている台が有利なんだ……』


 その台は、5人がゲームをしていた。


『まじか~。6人×2枚が、2から6じゃん。バスト多発って……』


 俺は、その台に座った。

 1000ドルを支払い、チップを10枚買う。


「まずは、一枚……」


 結果は……、【ナチュラル21】!


『来てんじゃね? これ!』


 2.5枚が俺の元に来た。

 だが……、全賭けするには、まだ早い。

 5人の内、2人が悪い手札だった。そして、ディーラーは、【19】。


『この場合の計算結果は……、〈まだ賭けるな〉だ』


 俺は、次も一枚賭けた。カードが配られる……。



『7連勝……。持って来た金額のほぼ倍の稼ぎになってしまったな』


 計算なんて、必要なかった。

 俺の回りには、観客が集まって来て、何か言っている。英語なので分からないけど、疑われているようだ。

 イカサマは、していないよ?

 まだ、普通に賭けているだけなんだ。

 俺の真価は、ここからなんだ。


 俺は、満を持して、五枚ベットした。

 周囲が、ザワザワし出す。大した額じゃないんだけど?


 そして、配られたカードの一枚目は、【7】……。


『やっちまった~!』


 心の中で、絶叫する。

 心臓の音が、爆音を鳴らす。

 そして、二枚目……、【7】。


『うぉ~い!? 【14】かよ!?』


 最も中途半端な、数字になってしまった。


 選択肢は3つ。

 1.ヒット……カードをもう一枚引く。

 2.スタンド……カードを引かずにその時点の点数で勝負する。

 3.スプリット……倍額を賭けて、さらにカードを二枚引く。


 ディーラーのカードは、【キング】と伏せカード。

 俺の計算だと、あの伏せカードは、【絵柄】だ。ディーラーは、【20】。それが、俺の計算結果だ。

 だけど!


 俺は、〈スプリット〉を選んだ。

 そして来たカードが、【7】二枚……。


『フォーカードって何だよ!? 普通に〈ヒット〉していたら、【21】!?』


 こんな計算結果は、導き出されなかった。

 更に、泥沼に足を突っ込んでしまったな。

 今賭けた、チップは10枚……。初期投資金額だ。


『どうする? どうする?』


 俺の勝てる見込みは、2から7までのカードだ。そして、確率的に【7】はほぼない。

 今までの経緯から、2から6もほぼない。


 俺は、スタンドした。

 ディーラーの伏せカードがオープンされる……。





 俺は、カジノから出た。


「ふぅ~。俺に賭け事は向いていないな。真面目に働こう」


 少しだけ、財産が減ったけど、いい経験ができた。


「さて、帰りのフライトのチケットを買いに行こう。空港で寝泊まりすれば、宿代も浮くんだし」


 俺は……、みみっちく生きて行こうと思えた。

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トランプゲームで【7】と言えば……いい数字だとは限らない 信仙夜祭 @tomi1070

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