アンラッキー7デビル

一陽吉

悪魔が受けるアンラッキー

 くそ、なんだってんだ。


 なんで、七人で俺を襲いやがるんだ。


 天使ども!


 まあ、たしかに襲われる理由はある。


 なにせ俺は悪魔だ。


 それだけで天使は俺を排除する。


 分かる。


 だがな、俺なんてはっきり言って弱小悪魔だ。


 三人もいりゃ簡単に殺せるのに、なんで七人もいるんだ!


 くそ!


 くそ!


 くそ!


 夜の森で木を盾に逃げるのが精一杯だ。


 人間みたいに疲れなんてものはないが、身体をかすめる聖光矢が痛え。


 その痛みで力が抜けるってのに、全力疾走を続けなきゃならねえ。


 天使のくせに悪魔をもてあそびやがって!


 だがな。


 ここまでやられて、俺も黙っちゃいねえ。


 天使どもは気づいてねえだろうが、いま、森中の魔力を俺の中に溜めている。


 俺が開発した独自スキル、魔力喰いだ。


 頃合いをみてぶっ放し、あわよくば七人全部、消し飛ばしてやるぜ。


 て。


 ?


 なんだ。


 様子がおかしい。


 俺の後ろ二百メートルほどで追ってた天使どもが、俺を囲むような円陣を展開したぞ。


 そして、円筒形の光壁を出しやがった。


 ま、まさかこれは。


 天使どもが使う対悪魔用の完全消滅術じゃねえか!


 おいおいおいおい、ふざけんなよ。


 なんで、魔王に匹敵するようなやつに使う大術を俺に使うんだ!


 ぐ、聖なる光が俺の身体をちりに変えていきやがる。


 痛みはねえが、めちゃくちゃ不快だ。


 そして力が抜ける。


 もう、ダメだ。


 天使どもめ……。


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 ・


 うん……?


 俺、生きてる。


 天使どもの消滅術を喰らったはずなのに。


 ……。


 そうか!


 魔力喰い!


 溜めた魔力で命拾いしたんだ!


 ……。


 まてよ、俺の身体が、ねえ?


 視覚はあるのに、手や足がねえから動かせねえ。


 どういうことだ。


 これじゃあまるで、魂だけになっちまったみてえじゃねえか。


「魂の水晶捕獲、成功しましたね」


「うむ」


 天使どもが俺のそばに集まってきやがった。


「それは良いのですが、本当にそこまでする必要ありましたか?」


「あるからに決まってんだろう」


「ちょこまかと逃げ回ってたからね。大物相手の術とか考えなくていいのよ」


「そうそう。完全消滅もそうだけど、捕獲だって同じ結界系の術だし、目的を達成できればそれでいいのさ」


「ザッツ、ライト」


 ──なんだ、天使ども。


 俺を殺すのが目的じゃなく、最初から俺の捕獲が目的だったのか?


 でもなんで、俺みたいな弱小悪魔を捕獲する?


 俺の代わりなんて何億といるだろうに。


「この悪魔がもつ、魔力喰いのスキルは武器開発に応用できすからね。いまから楽しみです」


「うむ」


「それは良いのですが、悪魔の力を使う必要ありましたか?」


「あるからに決まってんだろう」


「スキルだしね。善悪を考えなくていいのよ」


「そうそう。神のお心によって選ばれた悪魔も、元は同じ天使。強制的でも協力してもらえばいいのさ」


「デビル、アンラッキー」


 な、な、な、なんだとう!?


 つまり、天使どもが俺のスキルを使うために、神が俺を選んだってのか!


 しかも、魔力喰いてのは俺が名づけて誰にも喋ってねえのに、なんで知ってんだ。


 神は全てお見通しってことかよ。


 くそ。


 それに、魂の水晶捕獲っていやあ、半永久的に閉じ込められる術だったはずだ。


 天使どもの気が済むまで俺はサンプルか。


 くそ。


 くそ。


 くそ。


 くそ。


 くそ。


 くそ!


 これなら、消滅した方がましだ!

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アンラッキー7デビル 一陽吉 @ninomae_youkich

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