雨が上がるまで

 僕は結局家に帰ることが出来なかった。

 トンネルの中に幽霊さんと戻ったのはまだいいとして、雨はいつ上がるんだろう?

 いい加減、帰らないと、親に本当に怒られる。

 まあ、今更帰ったところで、怒られる事には変わりないか。

 うーん。脳内に浮かぶ事が親に怒られると説教されるの二択しかなくなってきたぞ?どうしたものか。

 なんて事を思っていたら、幽霊さんに話しかけられた。


「ねえ。アンタって、好きな人とかいるの?」

「え......?どうしたの突然......?別にいないけど......?え......?ドユコト?」

「なんでそんなに、片言なのよ。昨日のツッコミはどこに行ったのよ」

「いや、急にそんな事言われて、急に突っ込めないよ!?」

「あ、戻った」

「訳が分からん......」


 なんか急に変な事を言われたと思ったら、さらにへんな事を言われた。

 訳が分からん。


「もし、私がアンタの事を恋愛対象として見てるって言ったら、どうする?」

「うーん。別に何とも思わないかなー。うーん。どうだろう、勢いで何となくずるずる行きそうで怖いのは僕だけ?」

「うん。アンタだけだから安心しなさい?」

「なら良かったーって、良くないよ!何言ってんの!幽霊さんは!?」

「情緒不安定ね。アンタ」

「幽霊さんには言われたくないけどね!」


 はあ。幽霊さんの相手は疲れるなー。雨が上がるまでここにいるつもりだけど、ここで体力を消耗して帰れなくなったらどうしよう。

 まあ、流石にそんなことはないか。

 なんてことを考えてたら、いつの間にか雨がやんできてるじゃないか!

 やっと帰れる!


「幽霊さん!雨が上がってきたから僕はそろそろ帰るよ!昨日は泊めてくれてありがとう!また来るよ!」


 僕は、大きな声でそう言った。

 でも、幽霊さんから帰ってきた返事は思いもよらないものだった。


「ヤだ。行かないで。帰らないで......」


 幽霊さんが泣きそうな顔で僕にそう言ってくる。


「!?」

「さっき、『もし私がアンタの事を恋愛対象として、見てるって言ったらどうする?』って聞いたでしょ?あれ本当。アタシはアンタの事を恋愛対象として見てる。だから、まだ一緒にいたいの」


 僕からしたら、訳が分からないんですが!?そんな事を急に言われたって、上手く返せないし......。

 だからこそ、僕は幽霊さんに聞いた。


「何で?僕なんかを好きになるのさ?幽霊さんは美人さんだから、他にもいい人が居るでしょうよ」

「だって、アタシは幽霊よ?幽霊相手にこんなにフレンドリーに喋ってくれるのは、アンタだけなの。だから......。アンタの事が好き。あと、ちゃんとツッコミ入れてくれるし」

「それだけの理由で?僕をここに引き留めるの?」

「アンタはいや?」


 幽霊さんがもう一回声色を変えて言ってきた。



「ねえ、アンタはいや?」



 これ以上、僕にどうしろと......

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