お泊りだとっ!?
うん。落ち着け。僕。
良いか?ここは県内で一番恐れられている心霊スポットだ。
なんでこんなに普通に幽霊と会話しているんだ?
そもそも、幽霊って会話が成り立つものなのか?
「何?変な物でも飲んだ?あ、アタシが淹れた紅茶か」
「自覚あるのかよ!なら出すなって!」
「呪い殺されたいの?」
「なんか、見たことあるなこの会話......」
僕がそんな考え事をしていると、そんな事を言われた。
「そういや、アンタ今夜暇?」
「え?暇かと言われれば暇だけど」
「泊ってく?」
「あー。良いの?......って、何彼氏みたいに誘ってるの!?君は!?」
「だって暇じゃん」
「暇だからと言って、思春期の高校生にそんなことを簡単に言ってはダメだと思うんだけど。僕だけなの?」
「しらなーい。アタシ幽霊だもーん」
「急な幽霊アピールやめろし。ていうか、君は何歳なの?」
「レディにそんな事を聞いたら失礼だと思わないの?」
「幽霊じゃなかったの?」
「心はいつでも青春よ」
「おばさんか!ていうか、文脈どこに捨ててきた!?会話が一瞬成り立たなかったぞ!?」
「十七」
「急だなおい。え、十七って、十七歳!?何があったらそんな年齢で幽霊になるのさ!?しかも超絶フレンドリーだし!」
「それ今じゃないとダメなの?」
幽霊さんが静かだがキレイな声でそう言って来た。
「べ、別に、今じゃなくても大丈夫だけど」
「じゃあ、今は話してあげなーい」
「急に可愛いのは何なんだ?」
まあでも、幽霊さんになんで幽霊になったかを聞くのは失礼か。
まあ、名前も知らないけどね。
「で、どうするの?泊ってくの?」
「どうやったら、僕が本当に泊っていくという思考にたどり着くの?暇だけどね?親が心配するからさ。悪いけど、僕は帰るよ」
「ノリわるー」
「そんな事言ってもさ、一応僕は現役の高校生なんだよ!?大学生とかならそんな軽いノリで泊って行ったりするのかもしれないけどね!まあ、僕の場合、誘って来たのは幽霊なんですけどね!」
そんな事を言いながら僕は幽霊さんの目の前でドヤ顔をしてみた。
「アタシ泣いちゃうぞ!」
「どっかの銭湯の経営者の孫か!しかも、絶妙に声が似てるし!あと、何故このタイミング!?」
「声真似、これだけは得意なんだー」
「それ今かよ!」
そんなツッコミを入れる僕を見て、幽霊さんは笑っていた。
「ソファベッドがあるからそこで寝なよ。私は浮いてるからいらないし」
「本当に泊らせる気なんだね......」
「だって暇だもん。ていうか絶望するよりもっとつっこむポイントあったでしょうが」
「親になんて言おうかな......」
「聞いてないし」
僕は諦めて泊る事にしたけど、親になんて言おうかな。
帰って適当に言い訳すればいいか!
そんなわけで僕は幽霊さんが住んでいる?いや憑いているトンネルに泊まる事になった。
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