あんらきむら【KAC20236】

あんらきむら

「赤く燃えるは野焼きの炎　あんらきレッド！」

　赤色の全身タイツの男がポーズを決める。

「澄んだ青空田園風景　あんらきブルー」

　青色の全身タイツの男がポーズを決める。

「黄色き稲穂は稲刈りの時期　あんらきイエロー」

　黄色の全身タイツの男がポーズを決める。

「緑深き生い茂る木々　あんらきグリーン」

　緑色の全身タイツの男がポーズを決める。

「桃色の絨毯広がる芝桜　あんらきピンク」

　桃色の全身タイツの男がポーズを決める。

「黒麹どっしり辛口　あんらきブラック」

　黒色の全身タイツの男がポーズを決める。

「白麹マイルド軽口　あんらきホワイト」

「「「我ら７人、人呼んで田舎村戦隊アンラッキー７」」」

「はーい、おっけーです、一度休憩入りまーす」

　撮影していた市役所の職員に促されるまま、ヘルメットを外し汗だくの顔を手ぬぐいで拭う面々。

「なあ赤城氏、俺たちなにやらされてるんだべか」

「青田氏それをいっちゃーおしめーよ、俺にもわからんわ、はっはっはっは」

　赤と青の全身タイツが渡された水を飲みながらの会話である。

「おめーらはまだましだべ、おいなんてピンクだべ」

「わいかて黄色やんぞ、特にカレーが好きとかないっべ」

　桃色と黄色の全身タイツの髭面が並んで座り込んでいる。

「もっとわからんのはこのセリフよ、黒麹ってしょちゅ（焼酎）の仕込みのことけ」

「白も黒もどっちもしょちゅのことやんね、いっしょじゃいかんとね」

　白と黒の全身タイツの既に３０近く見える男性二人が寝転がり言い合っている。

「そがこて一番ひどかはこの名前ちゃうんけ、なんがアンラッキー７やと、運気が逃げそうな名前やきに」

　緑の全身タイツの筋肉ムキムキの男がサイドチェストをしながら言っている。

　この男たち、村おこしに駆り出された比較的若い衆である、そしてこの村の名前からアンラッキー７などと不名誉な名をつけられた……。

「仕方がなかと、こん村ん名が安楽喜村やしの」