55 あれ、支払えなくない……?



 今あるMPは……っと、こわくてMPの残量とか中々見えないんだよな。

 必要なものしか買ってませんから、大丈夫なハズ……。買う時もMPの欄は見ないようにしてるし。

 

「いまのMPは……おいくつ、おいくつ──まて、先に計算しよう」


 家計簿と一緒だ。うん。

 ちゃんと、オレが無駄遣いしてなかったら大丈夫なはず。

 どれも必要な出費だったからな。


「えーと、まず、前見た時は……650MPだったか? あれが、17日目だったから、あれから毎日貰えるMPが13日分あるってことか」


 トレーニングノートに書き出して行く。


 17日目で650MPでした。

 目的のオールインワンラックは毎月600MPの支払いです。


 ◯収入

 13日×15MP(毎日もらえる筋肉ポイント)=195


「あと、魔女と双子と勇者。この四人に筋トレの文化を教えて、オレのことも認知してもらった。なので、えーと?」


 魔女:100MP(筋トレの認知)+20MP(オレの認知)

 双子:(100MP+20MP)×2

 勇者:100MP+20MP

 =480MP(お客さんは増えていないからこれくらいだろう)

 上のと合わせて、675MP


「よし、とりあえずはこれで合計が1325MPだよな?……でも、ここから先が闇だな。多分、大丈夫だとは思うが」


 ◯支出

 ストレッチポール:140MP×2本=280MP

 スポドリ:10MP×5本=50MP

 

「ここまでは直近だから覚えてるのはこれくらい……あとは、プロテインとほとんど毎日購入してる水と……サプリ…………」


 マルチビタミン系のサプリ60MP×3

 プロテイン(5kg)800MP【1キロお得でした】

 プロテイン(1kg)200MP

 水は10MPを……毎日購入で130MP。合計で……


「………1640MPの支出で、合わせて──315のマイナス」


 え、くらくらする……。

 おれこんなに使ってた?? うそっ、うそでしょ?

 くそぉ……17日時点で「あ、もう650MP足りてるじゃん」ってなったオレのバカ。

 

「……支払えない……やばいぞ」


 なんど計算し直しても同じ計算になる。

 このままだと不味い。


「新規のお客も増えてない。ゴーレムとか人判定な訳がないもんな……だから、ええっと、オレ、えぇっと……」


 なんで異世界にまで来てこんな毎月の支払いに怯えないといけないんだよ!!!????????

 ええい、ままよ。どうなってるかは知らんが、お願いします!


「………………え?」


 そこに映し出された数字に、オレは眉をひそめる。


「バグ……?」


 それとも、引き落としがされてないだけの杞憂?

 もう一度まじまじと見ようとして、


「カシ?」


「ん……?」


 顔をのぞかせたイリアにMPボードを閉じた。


「お客さんだぞ」


「お客さんって……?」


 イリアの体の影からひょっこりと顔をのぞかせたのは、オレの知ってる顔だった。


「お!! レイ!! 久しぶりだな」


「えへへ、3日ぶりくらいですよお」


 レイが帰ってきた。

 王様のところに報告しに行ってたから、そのままどこかにたびに行くのかと思っていたんだが。


「報告は成功したのか?」


「はい! 即刻火炙りにしてました」


「えげつな……」


 クラシキが聞いたら泣き出しそうだな。嫌われすぎんだろ魔女。


「で、帰ってきたのにはなにか訳があるのかあ? また依頼とか?」


「いえ。カシさんにコレを渡しに」


 とことこと歩いてきたレイに手紙を渡された。なんだこれ。手紙ってのは分かるけど。


「!? レイ、手紙の宛先は」


 イリアがなんか驚いてるが、ビリビリと破いておこう。

 おれこういうの丁寧に開けられないんだよな。ラッピングとかもそう。

 開けた中身から出てきたのは1枚の少し固めの紙。


「ん〜……、なんか文字がたくさん〜……」


 なんか労いの言葉が書かれてるな。

 ビジネス文章みたいだ。どうせ定型文だろ。無視無視……で?


「あなたを……王城へ招待、いたします……って、王城?」


「ハイ! 魔女狩りのパーティーへの招待状です!」


 イリアが目を大きくしてる。手紙の宛先人に気付いてたんだろうか。

 それにしても、こんなことになるとは……。


「いかないとダメか?」


「国王様から直接に招待されてるので……」


「そうだな。その封蝋は陛下のものだ。行くしか無いだろう」


「パーティーって言われたって、おれなんも服持ってないよ?」


「服装は自由らしいです!」


 そういうのが一番信じられないんだっての。


「で、いつやるの」


「これからです! 今日の夜!」


「はあ……?? 今でしょスタイルか……」


 もう一度手紙をよく見てみた。たしかに日付は今日。時刻は夕方。

 そして──付き人を一人連れていてもよい、と書かれてあった。


「これさ。レイも同じ招待状を?」


「はい! あ、付き人のことですか? 悩んでて……」


「じゃあ、イリア。これるか?」


「!! 分かった」


「じゃあぼくは……あの戦いで頑張った人を連れてこいみたいなこと言ってたから」


「みんな頑張ってはいたが……この前いったメンバーの方がいいだろ。マレウスか、ルポムかだな」


「マレウスさんに……」


「いや、同じく前線を張ってたルポムの方が話を合わせやすいだろう」


「そうだな。じゃあ、ルポムに声をかけよう」


 マレウスは迷宮関係で頑張ってくれていたが、なにか突っ込まれた時に話をしやすいのは二回迷宮に潜ってるルポムだ。

 レイやカンナと一緒に魔女に立ち向かっていたしな。


「準備をするから、待っててくれ」


 それにしても、城に行くことになるなんてな。

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