52 歩く性的搾取がよぉ
「おはようなのよ……」
「あぁ、おはよ。朝早いな?」
「寝返りをうったら、体がいたすぎて……」
朝の支度をしていたら魔女が起きてきた。
とんでもない寝癖だこと。なに、怒って金髪になったりする?
「脚のトレーニングの筋肉痛は4日くらい続くぞ」
「この地獄が、あと4日も……」
「死なない体っていっても、痛いんだな」
「当たり前でしょ……あ、ほんとっ、階段降りるのも一苦労だったわ」
椅子をよぼよぼと引き、座った。そこは日光が直に差し込む位置だったため、席を横に移動。
目を瞑って気持ちの良い呼吸を繰り返す魔女。
「寝とくか? ちょっとオレ、そとに出るんだが」
「ンェ……どこいくの?」
「ちとな。食材の買い出しなり、あとは外をぶらぶら歩くのもいいかなっと思ってな」
異世界のことを何も知らなすぎるからな。
マレウスの袋は預かってるし。
「他の子たちは? いつも一緒にいるじゃない」
「だからこそのこの時間ですよ奥さん。のんびりと知らないモノを知らないまま触れるってのは良いことだ」
エルやアッパコムは早起きだが、昨日のトレーニングで割と追い込んだり、仕事がないからってゆっくり休んでるみたいだ。
他のみんなも同じ感じ。
「ふぅん」
「でも、魔女のあんたも外を歩くのは何年ぶりとかになるんじゃないかなと思った。一緒に知らないまま、ぶらりと歩いてみんか」
「何十年ぶりね。外の世界、か。たしかにいいかもしれないわね」
寝癖のついた頭髪を掻き、頬をパシッと叩いた。
「よぅし、外出てみますか」
「そうこなくっちゃな」
「あ、でも待って。この見た目だと魔女ってバレるかもしれないから……体を変えちゃいましょうかね」
そういうと魔女は指をパチンと鳴らして、光に包まれた。
えっ、あれじゃん。休日の朝にやってる女の子と一部の成人男性に受けてるアニメの変身じゃん。
くるくると回って、で、そこから……えっ、おばさんって言ってたのにそんなポーズまでしちゃうの……?
「はいっ。これで、クソガキに見えるでしょ!」
全体的にうっすい体になったのに、胸だけが以上にデカイ。
おいおい、こいつぁ、絵が美味い同級生がノートの端っこに書いてたような女の子キャラじゃねぇか。
絶対リアルじゃあありえん体ってヤツだ。性的搾取!!! って今にも聞こえてきそう。
「髪色もちょっと変わった……? オレみたいな色になってる」
「そうなのですよ。お兄ちゃんと同じ髪色にしてみた」
ほらほらいくわよ、って背中を押されて玄関から外に出た。
「姿を変えれるってなんでも有りだな……」
「元の姿はアレよ? 今は魔力で強制的に弄っただけ。全部を変えようとしたら疲れちゃうから、胸だけはこのままなのだ」
「だからデカイままか」
「男の人は胸が大きいのが好きだものね」
ゆさっと胸を持ち上げる魔女を見て鼻で笑った。
「脂肪がなにを言う。オレは断然っ、尻だ」
「えっ、ほら、ほーら、胸だよ〜?」
「尻だ。勘違いするな脂肪め」
胸のデカさは思春期の時のホルモンの分泌とストレスを貯めない規則正しい生活が大事だ……が、遺伝的な要素も含まれる。
から、尻だ。
尻はいいぞ。筋肉をつけてでかくしたら魅力的な尻になる。
だから海外の人(主にアメリカ)は、胸よりも尻を見る。
骨格のこともあるが「尻は後天的に育てることができる」ってやつだ。
あとオスの本能的なところで「尻のデカイ女」=「いい女」というやつもいる。
オレはその次元にはいないからなんとも言えないがな。
「まぁ、好みの話をしたら無限に出てくるからコレくらいにしておこう。じゃあ行くぞ魔女、買い物だ」
「うっ……うぇえ……」
「……?? どうしたんだよ。子どもみたいに泣いて」
「胸が嫌いな男の人がいるなんて思わなかった、からっ、自信なくなって……いっぱい研究して、おおきくしたのにっ」
「あ〜……悪かったな。誰も嫌いとは言ってないだろ」
「! じゃあ、ほらっ! 触ってみなさい」
「要らん。健康的な体をしてるヤツがオレは好きなんだ」
「うえええ……」
「歩く性的搾取め……」
めそめそと泣く魔女。
胸をでかくしたって言ってたか? 本当になんでもありだな。
というかキャラ変わりすぎじゃないか? ずっとあんなホコリまみれの遺跡にいたけど、実は明るい性格だったとか。
「ええい、泣くな泣くな。早く行くぞ。皆が起きてくる」
「はしれないっ、からっ……ゆっくり……」
「筋肉痛、か。ほんと、オマエは……ほれ」
脇腹の間に手を入れ込み、グイッと上に持ち上げた。
「うぇ……かたぐるま……」
見た目はこんなだけど、体重とかそこらは変わってないのか?
僧帽筋辺りが筋肉痛じゃなくてよかった。
「しっかり掴まってろよ、走るぞ」
「はしるってヴェ──」
オレの上で風に煽られて死にそうになる魔女と一緒に街に出ていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます