36 カウンセリング#レイ


 Q、はじめまして、自己紹介をお願いします


 A、えぅっ……レイって言います。


 Q、かっこいい名前ですね。光線とか放ちそうな。


 A、ありがとうございますっ! 光線は放て無いんですけど……てへへ。


 Q、(かわいい)なぜ、鍛えようと思ったんですか?


 A、それはっ! 敵を倒すためっ! です!


 Q、ほお。どういった敵を倒すんですか?


 A、今、依頼を受けてるのがあって。それが……ぼくで勝てるかどうか分からなくて、だから……強くなろうと思って。


 Q、それでイリアを見つけて、鍛えてもらおうとしたんだね。


 A、はい!


 Q、その依頼ってのはいつ頃にしないといけないものなの?


 A、できるだけ早くって言われてます。


 Q、じゃあ頑張らないとだね。どんな体になりたいとかある?


 A、ぼくは……お兄さんみたいな体にっ、なりたいです!


 Q、え、オレ???


 A、はい!! どこかの戦士さんですよね!?

 

 Q、あー……まぁ、戦士、戦士? 同じようなもん……なのかな。


 A、やっぱり!! ぼく、これに選ばれた時は不安だったんですけど、頑張って強くなります!


 Q、ん。その選ばれたっていうのは?


 A、あ、ぼく、勇者なんです。言ってませんでしたっけ


 Q、初耳だけど……え、勇者?


 A、勇者です! この剣を抜いた時に、なんかピカ〜って。すごく光って。勇者です、って言われて。へー、そうなんだってなって。


 ちょっと待て。

 勇者……? 勇者ってマジか?


 Q、そのことを他の人には言った?


 A、いや、言い出す機会なくて……隠してるわけでもないんですけど……。


 Q、おおおおおお……そうか。あ、じゃあ、あの城にいた理由ってのは


 A、城に行けって神様から言われて、で、行ってみたら依頼を受けて。


 Q、ちなみにその依頼ってのは……?


 A、西の森の中にある遺跡……? にいる魔女を倒して来てほしいって──


「レイ。ちょっと、待ってほしい」


「えっ、あ、カウンセリング終わりですか!?」

 

 ペカーと光る。まさに、光線レイってやかましいわ。

 まじで勇者っているんだあ。こんなちっちゃな子が勇者にねぇ……オレがやってたRPGゲームの勇者は確かにちっちゃかったけどさ。


 はーー。いや、てっきり、城にいたジュリアスみたいな屈強な金髪が勇者かと思ってたら、なーんだ。なんだ…………。


「…………レイ」


「はいっ!」


「トレーニング頑張ろうな。応援してるから」


「!! はいっ!!」


 眩しいっての。光るな光るな。納屋の中に太陽でもできたのかなあって皆が覗きに来るだろ。

 日が暮れてんだから、あ、ほら、やっぱり皆がぞろぞろと来たじゃないか。


「どんな調子だ?」


「あー……順調って言えばいいのかな?」


 イリア。それと、仕事終わりのアッパコムとルポム。

 みんなにはまだ言ってないって言ってたよな。

 チラと確認。うん、首をかしげる動作かわいい。言うてる場合か。


「オレさ。あんま、世に詳しくないから聞きたいんだけどさ。勇者ってどんなことをするんだ?」


「勇者か? ふむ。歴史を見ても少ない。神に選ばれた者だな」


「やることってのは、まぁモンスターなりなんなりを倒す、か? 冒険者とか傭兵の延長線にいるみたいなヤツだよ」


「拙僧もそこまでは詳しくは知りませんが。祖先は龍として生きていたため、中には勇者と戦った者もおるでしょう」


 やっぱり? そんな感じだよな。

 レイもそうなんだって顔をして聞くな。オマエのことだぞ。

 

「それがどうしたんだ?」


「あー、この子。名前はレイっていうんだけど……勇者らしい」


「ほお」「マジ?」「ふむ」


「で。依頼を受けて、近々、西の森にいる魔女ってのを倒しにいくんだが、それまでの間で鍛えてほしいんだと」


「ぼく……村人だったから、たまに森から逃げてきたゴブリンを倒したことくらいしかなくて。……戦い方とか、も、わかんなくて」


 ギュッと剣を抱いた。


「勝てるかなって思って。だから、みなさんが知ってることがあれば、教えてほしいです」


 ご丁寧な90度お辞儀。みんなは息を飲んだ。

 それもそうだよな。元の世界で言うと……なんだ? 勇者ってなんだ。

 元の世界で例えられないんだが? やべ、わかんねぇ。とりあえず大変ってことだ。


「そういうことなら、早く言え」


 ガシとイリアはレイの肩を叩いた。


「明日からはもっと実践的な訓練をするぞ」


「はいっ!」


「拙僧も力になれることがあれば、手伝いますぞ」


「ありがとうございます……!」


「おれは……」


 ルポムは苦しそうに震え、納屋を飛び出していった。


「えっ、ルポムっ!?」


 あー、なんだいったい! 情報が多いぞ!!? 

 

「三人はここで。レイ。悪い、今日のトレーニングは保留にさせてくれ」


「わ、わかりました!」


 出ていったルポムを追いかけ、オレは納屋を後にした。

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