16 これG7のテーブルじゃん
「ただいま〜」
「あ、帰ってきた。やっほ〜、家広いわよね、ココ。見てよこのテーブル。
「G7とかが開けるヤツじゃんこれ。すげぇ」
それかもしくはアニメの悲しい場面で、金持ちの子どもが端っこの席でもぐもぐと飯食ってるやつだ。
生きている間にこんなテーブルに座れるなんて夢にも思ってなかった。異世界凄い。いや、マレウスが凄いんだな。
「あー、そうね。開けるかも。……G7ってなに?」
「わしに聞くな。カシは出会った時から何をいうとるかよく分からんやつじゃろう」
「掃除はしといた。初めてだからやり方わかんなかったけど……」
「耳長は掃除なんぞせんもんな! ガハハ!」
「うっさいわね、まんまるちん!」
「でもキレイだぞ? 少なくとも、今日の朝よりかはキレイだ」
「……ありがと」
掃除ってのはやってみないと分からんからな。
オレも学生の頃に一人暮らしをしたんだが、引っ越しする前に掃除をしたつもりがありえんくらい汚くて死ぬほど怒鳴られた記憶がある。
あの経験から、あまり物をごちゃごちゃ置くのが嫌になったんだよな。ミニマリストという名のめんどくさがり屋になった。
「じゃあ、飯をこれから用意する。あと、ちょっと話があるから待っててくれ」
俺を含めて7人分の料理を作り、振る舞った。今日のメニューはかんたんですまん。
減量カレーだ。本来なら一人ひとりにメニューを組んでやりたんだが、仕方ない。レシピは昔に動画でみたのをリスペクト。SNSがある時代って今思うとすごいよなぁ。
そんなこんなで作り終えたので、盛り付けて目の前に並べていく。
カレーってのはこの世界にもあるのか? なかったらうんこにしか見えないだろうな。あ、ないのか。じゃあ、うんこだと思われてるな。
「これは、カレーっていう食べ物だ。オレの国のソウルフードだぞ」
「こんな乾いたドロみたいな……」カンナ、やめなさい。
「いや、うんこにしかみえんだろ」ルポムはやっぱりそういうよな。
「泥というのも栄養価が高いんですよ?」アッパコムのそれはフォローじゃないな。
「こらぁ、クソだな」ドヤ顔でそんなこというんじゃありませんマレウス。
「うんこはもっと色がキレイだよ」エル、やめてくれ。
「皆、心配するな。カシが出す飯は見た目があれだが実に美味い」
さすがプロテインを「さっき掃いて捨てた土」と言った女。顔が違う。
「まぁ、食ってくれ。あ、オレが先にくおうか。ほら、スプーンで掬って食う。はい美味い〜、食ってみなって」
毒を食うって訳じゃないんだから、ほら。
「……うまい。うまいぞ、これ!」
それみたか。この感じだとイリアも疑ってたな。
それで皆がパクと口にスプーンを運んでいった。
「おぉ、コレは美味い」
「……辛くね? 美味いけどさぁ」
「美味しいよ! カシ、これ! 美味しい!」
「……悪くない味ね」
「ムッ!! 鶏肉が入っておる!! カシ殿! 鶏肉が! 鶏肉が!」
「気に入ってもらえてよかった。あんまり料理はしてこなかったらな、ちょっと不安だった」
こっちに来る前の記憶を頼りに、MPストアに仕入れてほしい品を注文して、作ってみた。
実は裏でコソコソと試行錯誤をしてたんだ。
ようやっと思い出せたんだが、材料をかき集めるとMPが飛んでいくんだなぁ。はあ、つらし。
ってか、今思ったんだが、鶏肉ってエルは食べてもいいのか?
エルは
あ、普通に食ってるし、美味しそう。あ、ほっぺた落ちそう。あのりんごみたいな可愛らしい頬を誰か支えてさしあげろ。
「まあ、みんなが食べ出したからちょっと話をしようと思う。食べる手はとめんでいい」
エル、止めなくていいって。食って食って。温かいのは温かい内に食べなさいな。
「今回は、マレウスの恩義でこの家に寝泊まりをさせてもらうことになった。だから、最初はみんなマレウスにありがとうだな」
口にモノを入れたまま「ありがとう」という面々。カンナだけはぎこちなかったが、まぁ、いい。
「それでだ。隣の納屋にマシンを導入したから、これからは毎日、一人一時間ずつの筋トレをしていこうと思う。前みたいに一緒でやるって感じじゃあなくなるんだが、その分、一人ひとりに向き合ってトレーニングができるようになる」
反応はまちまちだな。ソレも仕方ない。
一緒にやるのが楽しいってのもあるからな。セミパーソナルとかスタジオのレッスンとかにわいわいできるから続けられる人もいる。
ここらへんはまた後で柔軟に変えていくとして。
「で、だ。明日から早速にトレーニングを初めて行こうと思うんだが、時間はどうする?」
「カシ、質問だ。飯屋の仕事はどうするんだ?」
「そうだな。あんまりそっちに割ける時間が無くなる。で、オレの収入は減っていく。あ、もちろんみんなからはおカネは取らない。その代わりに、飯屋からお客さんを呼んできてほしいんだ」
「お客さん……あ、さっきのマシンでオカネを稼ぐってこと?」
「そうだ。筋トレって文化はこの世界じゃあほとんど誰も知らない。知ってても、正しい知識を持ってない。だから、そこでビジネスをする」
もとより、その手を使わないとどうにもならん。
だって、毎月600MPがあのオールインワンラックで飛ぶんだもん。
筋トレの文化が広がると100ポイント
オレのこと認知してもらえると20ポイント
で、毎日振り込まれるのがオレの筋肉のポイントで10ポイント。
あのマシン代以外になにもポイントを支払わなくても、300ポイントが足りないのだ。
筋トレの文化を広げるか、オレのことを認知している人が増えなければ、あのマシンの代金が払えずに……払えないとどうなるんだ? クレカが止まって信用情報に傷がつくのか? 昔のパーソナルトレーナーになった時に給料未払いが続いて、一回まじで危なかったからなぁ。
まぁ、そうならないように気をつけろって話か。
「でも、そんなにうまく行かないってのは分かってるから、どうしようか悩んでるんだよなぁ」
まぁ、やってみないと分からん。実際にお金をもらうにしても、2ヶ月20万円の値段設定で繁盛するとは思わないしな。
やることが山積みだけど、動きながらかんがえたらいいだろう。
「食材の金くらいはわしらが負担をしてもええぞ」
「うん。カシちの作る料理おいしいし」
「それは同意ですな」
「本当か……? 助かる」
他の三人も頷いてくれた。ありがとう。
「ということで、明日からさっそく頼むよ」
なんとかなれ精神で初めた結果、当時のオレはあんなことになるなんて思ってもみなかったのである。
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