17 カウンセリング#エル



「カシっち〜! 来たよっ!」


「おぉ、エル! 朝一番だっ──」


 エルミサイル発射〜、じゃないぞまじで。首が飛ぶかと思った。

 女の子に突撃される日がくるなんて、パンを咥えてたらよかったか?


「さすが、新聞屋さんは朝が強いな。オレはどちらかというと夜型だから朝はしんどいよ」


「太陽さんの光を浴びながら空を飛ぶの楽しいよ?」


「エルちゃん……おじさんは空を飛べないの。ごめんねぇ」


 ちょこんっと座る彼女を前に、こしらえておいた木の板を取り出してその上にトレーニングノートを挟む。

 紙が高いらしいんだ。自分のトレーニングの記録を付けたり、パーソナルで来てくれた人の記録とかをつけようと思ってたのに。

 これがMPストアじゃなく、100円均一様だったらコピー用紙を大量買いしてるところだぜ、いやほんと。


「ようし、じゃあ、最初にカウセリングをやっていくぞ〜」


「おー! かうんせりんぐ〜! かうんせるんぎぃ〜」


「いぇあ〜。じゃあ、まずは体についての悩みはありますか?」


「悩みかぁ……胸が大きくて困ってるンだぁ……それと、羽がちっちゃくなっちゃって……」


「胸がデカイと。イリアに聞いたんだけど、鳥人ハーピーは胸筋が発達しやすいとかなんとか」


 昔に鳩が胸がデカイ理由を調べたことがあった、筋トレになにか活かせれるかってな。

 カラスとかペンギンとかタカとかが「たか胸・カラス胸」って名前がないのに、「鳩胸」って鳩だけ特別だろーが。

 でも、あれさぁ、すごいんだ。ハトが鳩胸である所以は「外敵から逃げるため」だそう。

 あの鳩胸は、翼を動かすための筋肉なんだってさ。すげぇや。


 じゃあ、外敵を作ればオレの胸筋も発達するのか? まぁ、そんなことはなかったぜ。実践した結果、でかくなったのは態度だけってな、はっはっは。


「胸の件は、鳥人ハーピーの飛翔能力を高めるためのモノだろう。だから、エルは飛ぶのがめちゃくちゃ早かったんじゃあ?」


「おぅ! 飛ぶのは早かったよ! 配達するの一番早かったんだ!」


「やっぱり、筋肉はデカイに限る。でも、それが嫌なのかな?」


「嫌って訳じゃあないんだけど……ここだけ大きいの、変、だと、思って」


「じゃあ、全体的に体を大きくするというか、引き締めるという方向で行こうか」


「! ウン!」


 うんうん、エルのことが分かってきた。ボディメイクの方向性はそれで良いだろう。

 あとは羽が小さいだったか。換羽期というヤツかな? 

 昔にインコを飼ってたからソレもなんとなく知ってる。猫に食われて死んだが、あれは辛かった。

 

 換羽期に必要なのは、俺も知ってる栄養素。ってことは、食事面もかんがえないとだな。


「うし、食事のことも任せてくれるかな?」


「いいよ〜!」

 

 じゃあ、カウンセリングも大体終わったところでさっそくトレーニングといこうか。

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