15 肩トレのお気に入りはコレ
「カシちただいま〜。お、なにこれ?」
「お、エル。と、二人も一緒か」
夜遅くまで自分のトレーニングをしてたら、飯屋の仕事を終えた三人が帰ってきた。
場所は伝えていたけど、ちょっと迷子になったな? 近い近いって言っても30分はかかるからな。いい有酸素運動だと思えばいいんだが。
「これは、オレが買った。オールインワンラック。メーカーはエヴ◯ルギア。最高の一品だ」
繰り返し言うが、超分割払い。オレのマッスルポイントは水が一本ようやく買えるくらいまでになくなった。ぐすん。
プロテインが切れたらどうしよう。不安になってきた。まぁ、頑張って筋トレ文化を広げよう。
「で、隣のデカイ建物がマレウスの家だ。オレも後1セット終わったら合流するから、先に入っててくれ」
「……」「……」「……」「む……」
「ん? どうした?」
「ちょっと、見ていって良い?」
「私も気になる」
「俺も。アンタのそんな顔見たの初めてだし」
「拙僧も、主人の働きぶりを見てみたく」
あ〜、なんか嬉しい。みんな、筋トレに興味が湧いたか。
最高に嬉しい。うんうん、いいよ、ぜひ見て行ってくれ。
「じゃあ、今やってる種目を紹介しようか。いうて、あとインターバルは一分しかないから短めにな」
ごくりと皆が喉を鳴らした。いや、そんな緊張をするもんでもない。
「今やってる種目は、アップライトロウっていう種目。持ち手の幅によって肩の横っ側と、前を狙えれる。今回はケーブルの最初のアタッチメントのストレートバーでやるから、手幅狭め。若干前側かな。サイドも狙うけど」
「あっぷ」「らいと」「ろう」「ですか」
「そんな別々に言わんでも」
肩の締めにコレをやるのが楽しいんだよ。
いつもはロープでやるのが多かったが、仕方ない。たまに、パワーラックでぶん回す時もある。まぁ気分次第だ。
「まず、ケーブルに対して正面に立つ。ケーブルの穴の位置は一番下か、その上くらい。で、ストレートバーを上から持ち上げる」
この時の注意点はしっかりと話しておかないとな。
「持ち上げる時に、肩より肘が上になるくらいまで引っ張り上げる。で、肩に負荷が乗ってるのを感じながら降ろす」
アップライトロウは初心者は間違いなくできない。ってか、肩のサイドってのはわかりにくいんだよ。
「肩のサイドってのは、言葉通りで肩の横についてる筋肉だ。それを縮めるためには、プールでちっさい子が浮き輪から顔を出してるときみたいな格好になればいい」
「……うきわ」
「あぁ、えーと。脇を開いて、肩の高さに腕を上げた時だな」
そうか現実にあんなヤツはいない。アニメだけでしか見たこと無いから分からんのも当然か。って、一分しかないから詳しい話はまた今度だ。
俺はサイドレイズであんまり重量を扱わないから、アップライトロウを高重量でぶん回すのが好き。
……う〜ん、これは人におすすめできるかって言われると微妙。
まぁ、楽しいのはそうだ。楽しいからやってる。
「足幅はピタッとくっつけたほうが体感、効く気がするんだが……重心の問題なんかな。でも、足幅が広いほうが踏ん張れるから重量を意識したいときにはそこまで気にしてない」
と、そろそろ一分か。
見られながら筋トレなんて合トレぶりだな。
「じゃあ、まあ一分くらいだ。見ててもいいぞ」
アップライトロウをオールインワンラックでぶん回すのは初めてだが、仕様は一緒だろう。
「すぅ……」
ガシッと滑車が決まる音が聞こえ、ケーブルの擦れる音が聞こえる。上まで持ってきて、ゆっくり降ろす。その繰り返し。
うん。やっぱり、最高に楽しい。
この肩がどちゃくそ疲労してる時に「いやまだできるだろう?」と追い打ちをかけるのが最高に楽しいんだ。
「ふっ……ふっ……」
段々と上がらなくなってきたら、体を使ってぶん回す。フォームなんて知るか、犬に食わせろ。
犬といえば、倉敷児島らへんのどっかは野良犬が多いらしいな。
おいおい世紀末か。野良猫は見たことあるけど、野良犬はまじでビビる。やっぱり倉敷ってのは凄い所なんだなと思った。
あれ、何の話をしてたんだっけ。とりあえず、アップライトロウは楽しいんだよ。
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