22 カウンセリング#ルポム


 食事の支度をしてたらルポムが帰ってきた。頬にキスマークつけちゃってまぁ、今日もお姉さまがたに大人気だったのね、この色男め。

 たしかに岡山のそこら辺でうろついてるホストよりカッコいいもんなぁ。異世界おそるべし。


「うし、じゃあルポム。帰ってきてそうそうだが、色々と聞いていくぞ〜」


 トレーニングノート準備よし。夕方よし。腹も減ってきた。

 

「あ、その前に、なにか食ったか?」


「ん。飯屋のおっちゃんが料理食わせてくれたぞ。アンタがオーダーしたんだろ?」


「それが何時間前くらいだ?」


「二時間前くらい? 三時間前くらいかも」


「ならいいや。ちゃんと胃で消化されたくらいだな」


「……?」


 トレーニング前にはちゃんと栄養を補給してからトレーニングをしよう。お兄さんとの約束だぞっ。きらっ。

 炭水化物もたんぱく質も脂質もちゃんと取る。固形物は消化に時間がかかるから二時間から三時間前くらいに。

 トレーニング前にプロテインを飲む人もいるが、その場合は一時間から一時間半前に飲むようにな。

  

「胃で食べ物は消化されるだろ? ンで、体に栄養素が行き届いた状態で筋トレをしない何が起こるかは話せば長くなるから話すんだが」


「話すのかよ」


 ◯栄養がない状態で筋トレをすると、その鍛えた部位は大きくなる。

 でも、筋肉が大きくなるためには余分にエネルギーがなければ大きくならない。

 だったら、事前にエネルギーがない状態で筋トレをしたらどうなるのか?


「はい、ルポムはどう思う?」


「げっ、ここで聞くのかよ……ない状態で、エネルギーを出すんだろ。魔法じゃねぇの?」


「実はね、自分の他の筋肉を分解してエネルギーを取り出してるんだ」


「うげ……まじ?」


「まじまじ。だから、鍛えたつもりでも他の筋肉が小さくなってる訳だ。だから、トレーニングの前と後の栄養補給はしっかりと行わないとって話」


「……あ、だからあのおっちゃんに飯を出すタイミングを伝えてたのか。なかなか出してこねぇと思ってたんだよ」


「バレた? 飯屋の大将とはもうズブズブの仲よ。まぁそれはいいとして。ルポムはどんな体になりたい?」


 あ、いきなり本題入りやがったって顔してる。いいだろ別に。

 

「理想の体ってことか?」


「あぁ」


「元の体に戻れたら最高だな。ソレ以外はない」


「ふむ……なるほど……」


 ルポムの元の姿っていうと、角が二本生えてた時の話か。

 角って生えないって言ってたもんな……じゃあ、ちと失礼。


「なっ、角、触んなバカっ!」


「なに乙女みたいな顔になってんだよ、よいではないかよいではないか」


 なんだよ、恥ずかしいのか? 体の外にあるのは恥ずかしくないだろ。

 あ、ソレを言うと男は二つの玉を外に放り出してるな。


「あ”っ」


「えっ」


「もしかして……ルポムにとってコレはきんた」


「ふんっ!!」


 ルポムの正拳突き。効いたぜ……いてぇ、普通に痛かった。

 でも成分は分かった。あれだ。骨と一緒だ。だったら、色々と考えようはある。


「ルポムの理想の体は分かった。それに向けてオレも力を貸すよ。他に悩みはあるか?」


「な、悩みぃ? ん〜……今ンとこはない。あ、女が群がってくるのがしんどい」


「こらこら、女じゃなくて女性だろ?」


「女」


「あははは、炎上だぁ……」


 オレは知らんぞ。言ったのはルポムだ。デュアラル王国にいるルポムです。元岡山県民の私じゃあありません。

 

「なにビビってんだよ。アンタぐれぇデカかったら女なんてぶち飛ばせれるだろ」


「うぉおう、すげぇ事言いだした。いいか、女性ってのはなぁ〜……」

 

 くどくどと女性のありがたみを説明して、そうしている間にルポムの最初の時間は終わった。

 ほとんどがゴルゴ松◯さんの受け売りだったが、ルポムのクソガキ精神に刺さっただろう。


 ンで次のお客様はー……アッパコムだな。


「あ、ルポムの料理もオレが管理していいか?」


「いいよ。アンタの料理好きだし」


「あらかわいい。ほっぺにちゅっ」


「キモ、死ね」


「たしかに今のオレはキモかった。ありがとう」


「うわわわっ……冷静になるなよ急に」


 これで了承も得たし、ルポムの課題もゆっくり解決していけばいいか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る