21 フェイントをかけてすまん


「おぉ、おかえり。帰ってきたかって……どうしたんじゃ、3人とも。顔が真っ赤じゃな」


「あぁ、ちょっと、な」「うん……」「……まぁ、うん。マレウス。袋ありがとう」


 エルは自分の部屋に駆け上がっていって、イリアはトイレに逃げ込んだ。

 マレウスは不思議がる。事情は言えないんだ。なんか悪いことしたみたいだなぁ……。


「とりあえず、有飯の支度をするよー……ってマレウスから酒の匂いがしない」


「おっ。ホッホッホ気付いたかのぉ! まだ酒を飲んどらんのじゃ」


「おぉおおお! マレウス! 凄いじゃないか!」


 いぇいとハイタッチ。


「ちゃんと、カシに言われた通りにしとるわ。空腹の時間を開けん。ストレスを貯めんようにするとな」


「でも、飲めないことがストレスになるじゃろうって言ってたろ?」


「ふんっ、我慢じゃ。我慢をしとる」


「我慢できるなんてえらいぞ。いや、本当に。でも、飲みたくなったらノンアルコールも飲んでみてくれ」


「いやっ、大丈夫じゃ。今日くらい我慢できる」


 あ、これはアレか。ダメなやつだ。

 むきと腕を出して、ニカッと笑うマレウスの二頭筋に触れた。


「マレウス。それはダメだ。いきなり酒を絶とうとしたら、多分、結構のストレスがかかってる。嗜む程度なら良いんだ」


「じゃが、それじゃあ……」


「100から0にいきなりに戻すと体はびっくりするし、長くは続かないだろ。だからゆっくりで良いんだよ」


 特にマレウスは精神衛生をよく保っておく必要がある。いきなり断酒なんてしてみろ、脳みそがいかれちまう。


「だから、今日は食後にでも一緒に飲むか」


 グイッと呷るポーズをしてみると、マレウスは泣きそうになりながら頷いた。可愛い奴め。あ、三編みがちょっとオシャレになってる。かわいい。

 

「あ、でも、オレが飲むのは珈琲だからな」


「なんじゃそれ。ワシの感動を返さんかい」


 ガハハと笑って腕を合わせた。マレウスに関しては焦る必要がないからな。このままやっていこう。

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