20 これが、マレウスの”力”ッ
「カシち〜! あ、イリアちも一緒ですか」
「よろしく。荷物持ちくらいの役に立つぞ」
「イリアもエルも今日はトレーニングしたんだから安静に。オレが荷物を持つから」
姉が二人いるからな。買い出しかなにかあったら大体オレが両手に荷物を持ってた。
「ほしい材料は、肉と野菜とキノコ類だな」
消費が激しいのがやっぱり胸肉。野菜とキノコはかさ増し。
増量ならある程度は脂質があってもいいんだが、今後減量チームが居るかも知れないからなんとも。まぁ、リーンな食事を心がけましょう。コレ大事。
米はMPストアで買えるけど……ん〜、この世界にも一応は米もあるみたいだしな。節約しとくか。美味しくないかもしれんがな……覚悟の上だ。
「あと米だ。米を買おう」
オレを含めて7人もいたら食材の費用がバカみたいに高くなる。
マレウスの家に住むことになってからの話し合いで、この食材はみんなが出してくれることになった。
なんて優しいんだ。ほろり。涙が出てきた。
「じゃあ、レッツゴー商店街!」
「うぉー!」
「オー!」
エルはともかく、イリアはトレーニング後だろうがっての。
元気があるのは良いことだけどな。
商店街にやってきてお肉屋さんに到着。エルが興味津々に見ていってる。
「胸肉と、えーと。おっちゃん! 鳥のお肉はどれ?」
「鳥類か。それならこの棚に入ってるやつぁそれだな。レア度が高いヤツは美味いし、いい脂が乗ってる」
「じゅるっ」
「エル。ヨダレ」
「じゅびっ……うまそうだったので、しつれいしますた」
袖でふきふきするんじゃない。小学生男児の袖みたいになるぞ。あれは鼻水ではあるが。
そういえば、胸肉って言ってもアレか。「鳥の胸肉」って言っても「なんの鳥ですか?」になる訳か。種類が多いとこんなことになるんだな。
アイヅバード。ビックバード。ビックバード……? あの子供向け番組に出てた黄色い大きい鳥のことか? えっ、美味しくなさそう。
「カシ、どれにするのだ?」
「悩み中。他の肉も見てていいぞ〜。あ、でもそんなに金はないからな。見るだけだぞ」
「「はーい」」
ん〜、PFCをチェックしながら見ていってるが、この肉が一番近いな。安いし。
【 料 理 】ウッズバード/100g
【 蛋白質 】19g
【 脂 質 】12g
【 糖 質 】0g
「おっちゃん、この肉を……そうだな」
オレだけでも、毎日500gくらいは食べるからなぁ。単純計算でも……うわ、金が飛ぶな。
毎週買い物をするとしても、コレくらいは必要だな。オレ以上に食うやつもいるし。
「25kgくらいは欲しい。あるか?」
「おお〜いいぜ。でもどしたよ、店でも開くのか?」
「大家族でな」
これでもプロテインとかでたんぱく質を補ってこれだ。とほほ。
「あ」
保存方法とかどうしよう。生肉を放置するのもな。冷凍庫なんてあるっけ?
MPストアで冷蔵庫を買うか? でも、あれ「この商品も追加してくれ」って言うのでもMPを使うからやりすぎはいかんのだ。
う〜む。
「そいや、25kgもどげんして持ち帰るんだ?」
「大将。アイテムボックスに入れるから出してくれ」
「……あいてむぼっくす? イリア、なにそれ」
「? マレウスが過去に作った魔道具で、買い出しに行くなら持っていけって言われた」
ズイと出された袋。ただの麻袋にしか見えないんですががが。
マレウスってことは魔法でもかかってるのか? で、魔法がかかってどうなるのよ。
「ほとんど上限なくモノを出し入れできてだな。あと、中身の時間は止まってるから腐ることもない」
「はあっ!!?」
あ、大きい声出してごめん。エルもびっくりしてる。ごめんね。
「なにその便利な道具……」
「便利だろう。だからアレだけの富をマレウスは築けたのだ」
冷凍庫を超える便利なものだと? じゃあさ、それに肉を入れたらいいってことじゃん。え、天才か? マレウスのお髭を触りたくなってきたな。帰ったら触ろう。
となると、一気に肉を買って……ダメだ。金が飛ぶ……これはオレの金じゃなく、みんなの金……。
「イリス。じゃあ、他の食材もその中に入れていくから……」
「任せられた!」
胸がデカイ人が胸を張るともっとでかくなるなぁ。
そういえば、そうだった。これも聞いておかないとな。
「ところで、エルさんや? エルさんって鳥の肉って食べていいのか?」
「え? うん。え? なんで?」
「あ、いや、なんでも、ナイデス」
なんでと言われると答えにくい。
鳥なのに、鳥の肉を食べていいのか? って多分、失礼な発言になりそうだし。
「エル。カシは多分、鳥なのに鶏肉を食べていいのかって聞きたいんだよ」
おいおい、コイツは引っ込めた地雷を盗み出して丁寧に人様の前に敷きやがった。
「え〜、そんなこと気にする人はじめてだよ〜。美味しいのを食べるのが正義なのです」
「そりゃあそうか」
そりゃあそうなのか? まぁいいや。深く突っ込むところでもあるまい。
夜中には、ルポムとアッパコムとカンナのカウンセリングがあるから、家に帰ったら支度もしながら待たないとな。
「次は卵を買いに行こう」
「おー!」
「うあー!」
順調に買い物をしていく。卵、野菜類、キノコ類。あとは米。まて、卵もいいのか……? いや、もういいか。考えるのめんどくさくなってきた。
メニューなんかは何もかんがえてないから、とりあえずは何でも使えるコイツらを買っておいて……。
よし、異世界の商店街も慣れたもんだ。たまに店主に耳が生えてたり、尻尾が生えてたり、舌が長かったりするくらいでどうってことはないな。
買いに来る前に書いておいたメモをちらと確認。よし、全部買えたみたいだ。
「あ、そういえば。オレが優しいとかなんとかってイリアが言ってた話だけどさ」
「ム?」
「何がどうなってそうなったんだ?」
「なになに〜? なんの話〜?」
「エル。オレって優しいか?」
「優しい!」
「優しくない!!!」
「エエエッ」
しまった、つい反射的に言ってしまった。岡山県民の悪い癖だ。口が悪いからな。
「で、なんでそう思うんだ? オレは生粋の岡山県民だ。優しくはない」
「おかやまけんみんってなーに」
「ルールも護らなければ、鉄の塊で暴走し、有名な作品の実写の撮影地だったことをずっと擦り続ける哀れな県民よ」
それが岡山県民ってやつだ。これの殆どが倉敷だが、倉敷市民は「岡山市と一緒にすんな!!」って謎のプライドを持ってるからな。プレートナンバーも「岡山」と「倉敷」で違うし。が、岡山はこんなもんだ。
「で、でも、カシちは優しいよ……?」
「料理が美味いしな」
「そう! それに、みんなを助けてくれたし、悩み聞いてくれるし……」
カウンセリングだな。みんなを知るのに必要だし、知らないと何もできないし。
「うむ。あの日、声をかけてくれなければ私はどうなっていたか分からん」
イリアの筋肉がアレばどうにでもなる気がするが。
「教えてくれるトレーニングも、やったら力がぎゅぎゅぐー! って漲ってくるし、ご飯がもっと美味しく感じれるし」
「そうだそうだ! 騎士団に居たときよりも強くなった気がするのだ。やはり気の所為ではなかったか」
そんなすぐに強くなるわけないでしょうが、何いってんのさ。
「あとはあとは、笑顔が素敵で、声も低くてかっこいいし」
只人って種族は表情筋だけが良いらしいからな。
「男はやはり体が大きくなくてはな。カシは良い体で、男らしい。私達が知らないことも知ってるし」
お、なんだ。急に褒めだしたな。照れるじゃないか、やめておくれ。
「カシのトレーニングしてる姿はかっこよかったよ? だから、カシはかっこいいの!」
「うむ。あと一回上げられないって時に、さっと助けてくれる姿なんて惚れてしまいそうだった」
「…………んんっ、まぁ、うん。人前で、あんまし褒めるのは辞めてほしいかな?」
「──っ〜!!」
「わっ、ああっ……!」
こんな人通りが多い所で。みんな見てるでしょう。ほら、あの子どもなんかも鼻水垂らしながらこっちみてるし。
「とりあえず、帰ろっか」
「う、うん」「そうだな」
なんだこれ。え、なにほんと。ちょっと、褒められるのになれてないからどうしたらいいのかわかんないよ。
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