第二部:異世界にマシンを導入

13 マレウスの家でっか



「おぉ、ここが……マレウスの!」


「どうじゃ? 普段は使わん場所じゃからのぉ、素材置場じゃあ道具置き場じゃあにしとった。使うもんがおるなら、使ってもらえばええわ」


 広さも十分、立地も良い。なにより、マレウスの家の近くってのが最高に良い。

 あの飯屋にも近いし、最高なのでは? ンにしても……


「でかすぎんだろ……」


「さすがはマレウス家の四男ね。金持ちめ」


 後ろからカンナがひょっこりと登場。今日は、この三人で色々と会話をしていた訳だ。


 他の三人はあの飯屋でお仕事中。にしても、飯屋のおっちゃんは泣いて喜んでたなぁ。働き手が増えて、休みが取れるって泣きながら言ってた。料理のレシピとかはエルがすぐに覚えたし、イリアは暴れるやつを鎮圧するし、ルポムは酔っ払ったお姉様方に大人気だし。

 うんうん、個人経営者ってのは大変だよなぁ。コンビニの店長とか休みがねぇって言ってたもんなぁ、すげぇや。


「でも、これは予想してたよりもデカイな……二階建てか?」


「昔は人を雇ってたり、鍛冶場につれてく若いもんを泊まらせてたりしたんだがなぁ? ワシが辞めちまったし、兄貴たちのところに追いやった訳じゃ」


鉱人ドワーフってのは金持ちが多いって聞いたけど、マレウス家はその中でも別だものね」


「耳長はワシが黙っとったことをペラペラと話よってから……これだから好かん」


「あら、隠しててもすぐにバレるなら隠し事をしてないほうがスッキリしてていいじゃない?」


「ったく……。で、どげんか? 使えそうか?」


「あぁ、最高だよマレウス……言うことない」


 いつまでも飯屋に寝泊まりってのは気が引けてたから、そろそろ家がほしかったんだ。

 その相談をみんなが飯屋に居る時にしたら、まぁ、最初はあんまり良い反応はなかった。


「ワタシ……新聞やで寝泊まりしてたし……オカネもあんましないんだ」


「私もだぞ。騎士団の兵舎はさすがに使えん」


「オレも家はない。宿ぐらしだからな。手持ちもない」


「私もありませんな。教会で寝泊まりをしておりました身ゆえ」


「私も宿ね。って、この王国で家を持ってるヤツなんか滅多にいないわよ」


「ン、じゃあ、ワシの家に来るか?」


 という感じ。

 みんなで硬い床で寝ていたというのに、言葉が跳ねた。で、カンナが一言。


「マレウスって、やっぱりあの鍛冶師の名家の!!」


 ということで、マレウスが隠してた過去がバレた訳だ。不可抗力だったが、いい話が聞けた。

 そもそも「マレウス」というのは日本で言うところの苗字で、「マレウス家の〇〇って感じらしい」。

 で、そのマレウスってのは「金槌」という意味。鍛冶師スミスは金槌を使う職業。天職ってわけだ。

 昔は王家に仕えていたこともあるみたい。すげぇ。


 そんなこんなで、お宅拝見。で、今に至る。ごっつええ感じやんけ。むしろ良すぎて腹たってきた。

 オレが岡山で住んでた所なんかボロボロだし、治安もあんまよくなかったし、車も持てなかったのに。

 あー、マレウス金持ちか。嫌になってきたなぁ。ってのは冗談だ。

 

「でも、本当にオレたちが住んでもいいのか?」


「もちろん。使わんもんを使ってもろうて嬉しいわい」


「オカネはいくら払ったら良いの?」


「いらんいらん。払いたいなら払えば良い。じゃが、お前さんらは今は不安定じゃろう。気持ちだけで十分じゃよ」


 なんだこのイケメン。やっぱり鼻髭と顎髭をそれぞれで装飾してるオシャレさんは只者じゃあないと思ってたんだよ。

 三編みなんか最高に輝いてるぜ、さすがマレウス。さすマレ! じゃあ、ここが新しい拠点になる訳か。


「よぉし、じゃあ……ここらへんにしてみるか? 自由に使って良いんだよな〜?」


「ええぞい」


 納屋の中を歩き回り、中央で傾いてもいない場所を発見。これくらいの広さならいけるんじゃないか?

 MPストアを確認。うん、十分だ。よし、初めての試みだが、やってみよう。ってか早くしたい。ワクワクしてきた。


「二人共、ちょっと離れててくれないか」


「?」「?」


 MPストアを開いて、ここをこうして、で……よしよし、ポイントは十分。

 で、これを……こうして。置き場所を決めるのか? あ、アタッチメントとかも選べれるのね。

 アタッチメントを着けるとポイントが高くなるって感じか……う〜ん、これは要らないかな。


「うん、とりあえずこんな感じだろう! 購入!!」


 ぽち、と購入ボタンを押すと指定した場所にボードに写っていたままのマシンが構築されていく。

 

「うああああ……すげぇ……なんか感動する」


 異世界ってすげぇ〜! でも、マシンはちゃんと地球のものなのがなおすげぇ。

 えっ、やばーーー、パーソナルの求人とかに書いてあるヤツのまんまじゃん。うわぁ〜。


「カシ〜? もう入っていいの?」


「なんかピカピカ光っとたが、大丈夫かのぉ?」


「どうぞ〜。じゃ〜ん、見てコレ。すごいっしょ」


「うぇっ?」「なんじゃあ……?」


 おぉ、長生きしてる二人がよく分からんって顔をしてる。この世界にはないよなぁ。

 

「コレは、オールインワンのラック。メーカーは最近人気のエヴ◯ルギアさんからの購入だ」


「おーるいんわん……えゔ◯るぎあ」


「カシは本当に知らない単語ばっかり言うわね。どこ出身よ」


「岡山だって。一番怖いアトラクションがあるところだぞ。鷲羽山って言ってな」


「???」 


「で、これのいいところはなぁ。まぁ、文字通り全部揃ってるんだ。ケーブルからラットプル、ハーフラックにスミスマシン。あとローイング。最高にイカスぜ。いやぁ、コレでパーソナルジムデビューを飾れるとはなぁ〜、嬉しくて涙出てきちゃう……オレ岡山県民だから涙は枯れたはずなのに……」


 ふんす。いやぁ、いい買い物をしたもんだ。


「まぁ、超分割払いを除けば……」


 いやいや、良いものには金を払え、先行投資って意味でね。

 それにしても、本当にやばくねぇ〜?

 セーフティーもあるからベンチプレスもできる、スミスとしてもパワーラックとしても使えて、ラットプルもケーブルもできて……何ができないの? あんた、ねぇ、何ができないの? やば。

 この光沢とか、最高なんだが。やば、え、やば〜。楽しくなってきた。


 ちなみに58回払で、毎月600ポイントを支払いです。はい。凄い。

 一括で買おうとしたら5桁だ。無理無理。分割で買うしか無い。

 最初はダンベルにしようかと悩んだけど、男ならな。買うでしょ。


 おかげでMPがかつかつだぜ。まぁ、毎日入ってくる自分の筋肉ポイントが10で、一ヶ月後には300ポイント。あとの300ポイントは筋トレを広めたり、オレのことを広めたりして……うん、まぁ、なんとかなるだろう! 


 こういうのはくよくよ考える前に行動だ! 人生は冒険らしいからな。


「カシ。それは、なにをするものなんじゃ? どこから出したかも気になるが……この作りは……見たことがないのぉ」


 さすが鍛冶師スミス。気になるのだろう。そうだろうそうだろう。武器でもないし、家具でもないからな。ある種の大砲かと思ってるのかもしれん。


「気になるなら、やってみるか。せっかくだしな、ここの家主に最初は体験してもらおう」


 オープニングの無料体験だ。さぁ、マレウス、その肩と腕をさらにムキムキにしてやろう。

 あ、カンナももちろん後でやるぞ。仲間はずれにはしないから安心して。

 

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