07 プロテインはチョコ味にしとけ
プロテインの味で悩んだことはあるかい?
そういう時はチョコを選べば正解だ。間違っても、変な味を狙って行くなよ。失敗するぞ。
あと、ドラッグストアにあるヤツをみんな買ってる人気商品だと思わないことだ。ネットをちゃんと見て、味のレビューとかちゃんと見ろよマジで。
プロテインはなぁ、いい商品なんだよ。
なんていったって最も手軽に健康を手に入れることができる商品だ。
なのに、みんな「太る粉だ」なんだ言って避けてる。
だったら、その飯と飯の間に食ってるそのお菓子と、カフェラテを飲むな。それこそ太るだろ。そもそも、飲料でカロリーを取ることを恐れろ。
「イリア。これは、プロテインという粉だ」
「粉……麻薬か」
「あぁ、違う。もちろん違う」
「土色だぞ。さっき掃いて捨てた土じゃ」
「違う。風評被害になるから辞めてくれ」
あと、そんなキリッとした顔で言うな。怖い。
「プロテインってのは、筋トレをする上では無くてはならないものだ。多分、そのうち、イリアも好きになる」
プロテインというのは誤解されがちだが、日本語で言い直すと「タンパク質」だ。
タンパク質っていうのは体を作ってるヤツで、爪とか髪の毛とか肌とか臓器なんかもタンパク質で作られてる。
つまりは? 摂取しないといけない栄養ってことだ。
だから、こうやってシャカシャカとな。
「筋トレをすると、なぜその粉が必要なんだ……?」
「あー、えーと。詳しくいうと長くなるが、オレたちは今、筋肉を壊した状態だ」
「壊した!?」
おぉ、ペタペタと触ってるな。
大丈夫だ。胸が小さくなる訳じゃない。むしろその逆だ。
「心配しなくても、これから合成をする。そのために、このプロテインを飲むんだ」
「……?」
オレたちの体の中では、タンパク質の合成と分解が頻繁に行われてる。
髪とか爪とかがわかりやすいだろう。アイツら伸びるし。
それと、臓器とか筋肉とかも同じように日々、合成と分解がされてんだ。
だからタンパク質は定期的に、というかコンスタントに意識的にちゃんと一定量を摂取せんとならん。
そのくせに、日本人ってのはタンパク質摂取量が少なすぎるんだよ。
何をしなくても体重×1〜1.2倍のタンパク質は必要だからね。摂ろうね。お客さんにどれだけ言っても「えぇ?」って顔されるけどさ。たんぱく質と脂質ばっか食ってんじゃねぇよ。
「言い忘れてたが、筋トレで筋肉が大きくなる理由はな。筋肉に『同じことをまたされたら大変だ。次は耐えれるようにならなきゃ』って思わせるからだ」
「同じことをしようと思ってもできるぞ?」
「今回のはな。自重トレーニングの中でも初心者向けのをやったから。それでも、普段しない動きだったから筋肉はビビってるぞ」
つまり、今のオレとイリアの筋肉は分解された状態で、もっと大きくなろうとしてくれている訳。
筋トレで余計に筋肉を破壊した後ってのはもっと必要になってくる。
「ってことで、そら。人生、初めてプロテインどうぞ」
「……ドブのような色合いだが……」
「心配すんな。味は保証する」
「ええい!」
おお、いい飲みっぷり。
「どうだ?」
「美味かった!! もう飲んだらダメなのか?」
「飲め。今日のイリアの食事じゃあたんぱく質が足りんと思ってたんだ」
イリアがプロテインを気に入ってくれてよかった。
あとは、乳糖不耐症じゃないこと祈ることだが。アジア人は半分以上がコレって言われてるからな。
まぁ、この世界の人間は腹が強そうだし、大丈夫か。
オレの方も飲んでおこう。うん。味は変わらん。さすが、マイプ◯テイン。初回購入特典もありがたかった。ギリギリ変えないかと思ってたぜ。
「カシ!! これ、本当に美味しいぞ!! でも、なんの味なんだ? 甘いし、食べたことがない味をしてるんだが」
「チョコって言うんだ。カカオから作るヤツなんだが」
「チョコ!? そんな高価なものだったのか!? それは……え、っと」
おっと? 高価なものって言ったか?
血相変えてオロオロし始めた。
「すまない! いくら払えば良い!? 知っての通り、手持ちが無くてだな。ここで働いて返すから……!」
「ちょ、ちょっと待て。大丈夫だ。イリアはオレの夢の手伝いをしてくれるって言ってくれたから、こうやってオレの方も色々としてるんだ。だから、気にすることはない」
カカオって確か、生産国と消費国が違うことで有名だったか。
SNSでカカオを取る少年の画像と、そのチョコを無駄に消費してる人の画像が貼られてるのを見たことがあるな。
そう思うと、ここはカカオの生産国じゃない。というか、チョコを作れたとしてもあの味にまで仕上げるのにはかなりの技術が必要だろう。
「でも……」
「うーん……なにかしたいって思ってくれてるならさ、ちょっと手を貸してほしいことがあるんだ」
「! 私が手伝えれることならなんでも言ってくれ!」
「オレの筋肉に関する知識を広めるためにこれから残りの10日間、一緒にホールを回って、目ぼしいやつがいたら声をかけてほしい」
「分かった。任せろ」
MPを上げるために、筋トレの知名度をオレの筋肉を広める必要がある。
せっかくのお仕事期間中だ。使えるものは名一杯使ってやろう。
そうして、異世界に来て初めての筋トレが終了した。
【お買い物履歴】
シェイカー:100MP
水:10MP
プロテイン(1kg):200→150MP(初回購入特典により)
残りMP:30
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます