アンラッキーセブン検定を求めて
藤泉都理
アンラッキーセブン検定を求めて
「ねえ、お母さん。お母さんはどんな資格や検定を持っているの?」
小学三年生の時だ。
学校で色々な資格や検定があることを教わったので母に聞くと、胸を張って答えた。
アンラッキー検定だよ、と。
アンラッキー検定。
監視員が検定する中、朝起きてから夜寝るまでの間に、アンラッキーなことが起きたらもらえる検定である。
アンラッキーワンが最低段位であり、アンラッキーセブンが最高段位であった。
「あと一個なのよねえ。どうしても一日で最高六個までなのよ。アンラッキーなこと」
「もう諦めたらいいのに。どうせ持っていたって何の役にも立たないじゃない」
高校二年生になった私が冷たい視線を向けると、母はポケットに入れておいたハンカチで目元に生まれた涙を拭おうとしたけれど、なかったので袖を代用品にしていた。
これも一応アンラッキーなんだろうか。
「ひどい。小学三年生のあなたはお母さん頑張ってって。すんごく応援してくれたのに!」
「小学三年生の私って、すんごくバカだったんだね。反省するわー。猛反省するわー」
「うう。どこからどうなってこんなに冷たい子に育っちゃったのかしら」
「喜んでよね。まともな娘に育ったって。ねえ、御当さん」
「はあまあ」
私が視線を向けた先には、上下紺青色のシーツを着た御当さんがいた。
「もう。いつまで御当さんって言うの。お父さんでしょ」
「だって御当さん、今は仕事中じゃん。お母さんの監視中じゃん。公私は分けないと。くんだらない仕事だけど。御当さん、大変だねー。早く離婚したらいいのに。ずっと監視していてほしいので、いっそのこと結婚しませんか。なんて、最悪な求婚するお母さんなんかと」
「いえ。私は大好きなので」
「お父さん」
「あーあーやってらんないわー」
私は受験者と監視員に背を向けて自室へと戻り、椅子に座って資格、検定一覧表を眺めた。
私は絶対将来役に立つものを取得しようっと。
アンラッキーセブン検定を求めて 藤泉都理 @fujitori
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