第17話 聖女様は企てたい⑤
でもまあこれで巫女長には『身体の成長が気になるけど、それは隠しておきたいお年頃な聖女様』を印象付けられた……はず。紙とインクを一緒にお願いしたことで照れ隠しなのを強調できたはずだし、少なくとも『欲しい物はちゃんと要求してくる聖女様』というイメージは持った……はず。間違っても買い物したいから神殿脱獄計画を企てている……とは夢にも思わない……はず。自信が無いからはずはずばっかりだけど、他人が何を考えているのかなんて分からないんだから、自信が無いのは仕方ない。とりあえずダメ元で頼んでみた牛乳が手に入ったので、資金が節約できただけでも良しである。
✤
「さて……と」
巫女長との交渉でごっそりと疲弊した心身を癒やすために三分ほどソファーでゴロゴロしたあと、気持ちを切り替えて「よっ」と起き上がる。今の時刻は午後五時五分頃。夕食が運ばれてくるまであと一時間もない。計画の第二段階開始である。
まずは外部……というか主に巫女長にバレないように、私の周囲に《結界魔法》をキッチリと張る。本来は外部の脅威から中のものを護るための魔法だが、応用すれば覗きも盗聴も侵入も不可能な、完全無敵な密室の完成である。
次に《収納魔法》の中から予め用意していたある物を取り出して、テーブルの上に置く。
見る人によっては十字架のように見えなくもない、一辺だけが丸くて他の三辺は長方形に切り抜かれた、ごく普通のただの紙。自習とかに使う、ごくごく普通のただの紙。……なのに多少減りが速いくらいで何か嗅ぎ付けそうな巫女長は何なの?
若干の不安に駆られた気持ちをなんとか立て直すと、その紙に手のひらをかざし、魔力を込めながらイメージを膨らませて《創造魔法》を発動する。
「顕現せよ《
その
これがかつて日本で活躍していた陰陽師が使っていたという、式神という術からヒントを得て創造した『お出掛け出来ないなら誰かに買ってきて貰えばいいじゃない』略して『私の(より良いぐうたら生活の)可能性(を広げてくれる分身)』である(端折り過ぎな略称)。
文字通り
これで万が一、いや億が一、あの勘の良い
さて、時間も限られていることだし、早速次の行動に移らないと。まずは……テーブルの上から降りようか、私の
うん、流石にお行儀が悪いからね。
聖女様はだらけたい 〜猫被り少女の嘘と真実〜 明里 和樹 @akenosato
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