第13話 聖女様は企てたい①

「ふーむ……」


 お風呂その他諸々を済ませて、白い長袖のワンピースという楽なパジャマ姿の私は、ふかふかベッドの上でゴロゴロとしながら、とある本を読んでいる。明日も一日神殿待機で外出外回りの予定も無いし、今日のやるべき事を終えてあとは寝るだけ、というぷち開放感に包まれながら、こうしてだらだらと本を読める時間は、ほんと、平和で良いなぁ……(だらけ顔)。


 お風呂のあとにこの聖女専用エリアにある書斎から持ってきた数冊の本の内の一冊を、ペラり、ペラり、と読み耽る。……について書かれていないかを探しながら(悪い微笑)。


 今読んでいるのは、とある代の聖女様が自ら書かれた手記。ここの書斎に入れる聖女にしか読めない、超絶希少レア本である。ただまあこういう個人の日記みたいなものを読むのはちょっと気が引けるけど、ここの本棚にわざわざ残してあるのだから、読んでいいという事なのだろう。という訳で有り難く読ませていただいております。とはいえ全部読むには時間が無いので、今は目的の情報がないか斜め読みでチェックしていく。あとでちゃんとしっかりと読ませていただきますので、今はお許しください。



 ✤



「やっぱり無いかなぁ……」


 一通り目を通し終え、パタン、と頁を閉じると、ベッドを降りてぺたぺたと歩き、傷まないように、そっ、と化粧台の上に本を置く。……ベッド脇にサイドチェストとか欲しいなあ。


 ベッドに戻ると布団に潜り込み、再びゴロゴロとだらけながら思考を巡らせる。


 あの本には聖女の御役目お仕事の事やちょっとした日常の事など、彼女が聖女として過ごした日々が綴られており、今後の聖女生活に役立ちそうな情報はチラホラあったけど、目当ての情報は無かった。


 歴代の聖女様は王侯貴族の出身者が多い。あの手記を書かれた聖女様もそうだ。育ちが良いからなのか聖女だからかなのか、元々そういう方だから聖女に選ばれたのか、真実がどれなのかは分からないけど、残されていたいくつかの本を読む限り、皆様とても品行方正であらせられる。……まあ、失礼を承知で言わせていただくと、こうして後世に残した物だから都合の悪い事は書いて無い可能性もある。だって猫被りの私なら素の自分の事なんて絶対に書かない──絶対にだ!(強い決意)

 ……とまあ、こんな腹黒い性格をしているうえに、異世界の知識持ちという私が異端中の異端なのは、重々承知ではあるけれど。


 とはいえ無かったものは仕方ないし、今後の私のより良い聖女生活の為にも、このを軌道に乗せるのは仕方ない。



 という訳で──作戦名・神殿脱獄オペレーション・プリズンブレイク、始動である。

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