第12話 聖女様の神殿での一日⑦

【午後六時。夕食】


「いただきま〜すっ♪」


 夕食を運んで来てくれた巫女さん達にお礼を言って下がってもらうと、待ち切れないとばかりに、早速食べ始める聖女様。


 パンとシチュー、スクランブルエッグにトマトサラダという、質素では無いが豪華という程でも無い夕食を、大変美味しそうにぱくぱく、もぐもぐ、と食べる聖女様。


 …………お分かりいただけただろうか……? そう、神殿の食事は基本、パンとスープにサラダ、それにメインの品が一皿なのである。しかも今日にいたっては朝昼晩と三食、卵料理である。にも関わらず聖女様は毎食、大変楽しんでお召し上がりになる。これは聖女様が食べるのが大好きなのは勿論、神殿の調理人が腕によりをかけた一品であり、それに何より神殿には──食事くらいしか、楽しみが無いのである。だから聖女様はいつも楽しんで食べる。……余計な事を考えないように。例えば「たまにはお肉食べたいなあ……」とか。





【午後七時。お風呂】


「ふぃ〜……♪」


 と、気の抜けきった表情&声を出して湯船に浸かり、リラックスする聖女様。先程夕食の食器を下げに来た巫女さん達を最後に、今日はもう誰もこの部屋を訪れません。なので完全に被っていた猫を投げ捨てています。

 そもそも歴代の聖女は王族や貴族のお嬢様が多かった為、本来なら着替えやお風呂も巫女さん達にお世話してもらうのが通例だったりするのだが、孤児院育ちで身の回りの事は一人で出来る上に、現代の常識があるので流石恥ずかしい聖女様は「えっと……お風呂はその……は、恥ずかしいので、一人で……大丈夫……です」と断りを入れ、こうして優雅に一人風呂を楽しんでいる。……本当は一人でだらけたかっただけでは?





【午後八時。就寝】


「ふぁ……」


 と、可愛らしく小さな欠伸をする聖女様。夜の八時というと現代人の感覚からしたら早い時間だが、朝の早いこの世界では普通であり、また、寝るのが大好きであり出来るだけ惰眠を貪りたい聖女様は、この時間には就寝する。……順調にいけば。


 ……そう、お分かりいただけたたろうか……? 起床してからここまで、自由時間が一切無いのである。ごはんや休憩の際に隙あらばだらけている聖女様ではあるが、一日のスケジュールは常に埋まっており、好きな事に没頭ストレス発散出来るのは唯一、この時間なのである。


 だが現代知識のある聖女様は、こうも思っている。『成長期に寝ないと、大きくなれない──』と。

 どことは言わないが、もっと、いやもうちょっと、いやもう贅沢は言わないのでほんの少しでも大きくなりたい、と切実に願う聖女様は、睡眠の重要性をとても良く識っている。


 精神ストレスを取るか肉体成長を取るか──聖女様の悩ましい夜は、今日もゆっくりと更けていく。


 ……明日も忙しいのですから、うだうだと悩むくらいなら早く寝た方がいいと思いますよ、聖女様。

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