第11話 聖女様の神殿での一日⑥
【午後一時。業務再開】
「よろしくお願いします」
「……はい、聖女様。よろしくお願いします」
スカートを摘み、淑女の挨拶でお馴染みのカーテシーの姿勢を取る聖女様。授業再開の挨拶の時点で、早くも巫女長の厳しい格付けチェックが入る。……どうやら及第点のようである。
授業の内容は基本的に、午前は座学、午後は実技となる事が多い。特に聖女は立場上、儀式での立ち振る舞いや王侯貴族との会談の際の礼儀作法等、覚える事は多岐に渡る。ちなみに聖女様は聖女なので淑女の挨拶であるカーテシーをする事は無いのだが、「正しく識っておかなければ、相手がきちんと挨拶しているのか分からないでしょう?」という巫女長の教育方針により、こうしてみっちりと叩き込まれている。見事な正論パンチである。……そういうところだぞ。
ちなみのちなみにこのカーテシー、軽く膝を曲げたぷちスクワット状態を
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【午後三時。ティータイム】
授業再開から二時間、ようやく休憩である──と、思った? 残念、授業でした!
少なくとも聖女様にとっては、お茶会に招かれた場合の作法や会話の仕方を学ぶ、真面目な授業の時間である。清貧を尊ぶ神殿において甘味を口に出来る貴重な機会であり、甘い物大好きな聖女様ではあるが、その味を楽しむような余裕は一切無い。世界大会の決勝戦のマウンドに上がる
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【午後五時。終業】
「……もう……無理ぃ…………」
そう言って被っていた猫を、ぺいっ、と放り投げ、ぱたり、とソファーに横たわる聖女様。勿論、授業を終えた巫女長が聖女専用エリアから退出したのは、既に魔法で確認済みである。休憩を挟んだとはいえ、朝から神殿No.1の生真面目人間(聖女様談)の巫女長と、マンツーマンでみっちり八時間授業である。高校No.1ポイントガードとずっとマッチアップしていた、宮○リョータ並に疲弊していたとしても不思議では無い。
「……でも……平和で良かった…………」
と、目を閉じて、静かに呟く聖女様。『聖女』が必要な事件が起きなくて心から安堵する。猫を被っていなくても────彼女は『聖女』なのである。
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