登場人物紹介 聖女様

 聖女様。本名は当然あるが、この神殿に彼女を敬称聖女様以外で呼ぶ者はいないため、ほぼ固有名詞と化している。


 腰下まである長く美しい銀髪と、神秘的な薄い翠金色の瞳が特徴的な、小柄な少女。この色彩は聖女に選ばれた者に必ず現れる現象であり、元々は全く別の髪と目の色をしている。


 捨て子のため正確な年齢は不明だが、おそらくは十五歳前後。


 同年代と比べて、全体的に華奢でいろいろと控えめな体型。だが手足はスラリとしていて全身のバランスが良く、顔も非常に整っているので、黙っていれば正にお人形さんのような可愛らしい美少女。なお現代のような写りの良い鏡が無い環境で育った為、自分が美少女であるという自覚は薄い。それどころか本人はもう少しいろいろと成長して欲しいと思っている為、逆に自分の容姿に対して自信は無い。


 同年代の少ない田舎の孤児院で育ったのであまり比較対象がおらず、自分は普通かちょっと低いくらいの背丈だと思っていたが、人の大勢いる神殿で暮らすようになると「嘘、私の身長……低すぎ……!」と内心ショックを受けたとか受けてないとか。


 本来はマイペースでのんびりとした性格。だが長引く聖女自粛生活によって、最近はちょっと壊れ気味テンション高め。加えて最近ちょっぴりお肉が付いたような気がするのが、さらにストレスに。ただし気にしているのは本人のみであり、別に太っている訳ではない。ただの成長期である。むしろ身の回りのお世話をする巫女さん達は「嘘、聖女様……細すぎ……!」「羨ましい……」「流石です、聖女様……!」と、羨望の眼差しを送られているとかいないとか。


 こことは違う、“別の世界の記憶”がある。幼い頃からその記憶を使い、美味しい食べ物や便利な魔法をいろいろと開発している。ただしその事は周囲には絶対の秘密であり、必然的に嘘──人前で猫を被るのが巧くなった。ちなみに、あくまであるのは現代知識や常識といった情報のみであり、所謂“前世の記憶”的なものは無い。


 チートはあっても無双する気は無く、自分と周りのためにひっそりと使って楽しく過ごせたらな〜、と思っていたが、只今世界中の人達に注目されながら、大絶賛聖女様活動を邁進中。「どうしてこうなった……」と内心遠い目をしているが、それを知る者は周囲にはいない。流石の猫被りである。

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