第5話 聖女様は長湯したい④

「ふい〜〜……♪」


 お風呂から上がって全身くまなく水分を拭き取ると、くるり、とバスタオルを身体に巻き付ける。


 考えたらアイスは孤児院にいた時に作ったのが最後で、在庫がもうあれしか無かったんだよねぇ。今度時間と材料を揃えて作るつもりだけど、それまではあの一箱を大事に食べないと。……大事に……慎重に……食べ(過ぎないようにし)ないと……(血涙)。


 ほんとは真っ先に、髪を梳かしたり乾かしたり化粧水やら何やらを顔とか身体に塗ったりと、いろいろとケアしないといけないんだけどねぇ。何でも聖女様は綺麗じゃないと駄目なんだそうで。だから体型にも人一倍気を使う訳なのだよ……。そもそもこんな格好バスタオル一枚でいるのが巫女長に見つかったら、一体何を言われるか……。……でも今日は後回し! どうせすぐ終わるしねー。


《収納魔法》の中から目当ての物をサッ、と取り出して、右手に掴む。ふふふ……これこれ……。


「てってれてー! コーヒー牛ー乳ー!」(某猫型ロボット風口調)


 いや〜、お風呂上がりといえばこれかな〜、って♪(異論は認めます)


 私が地球の記憶とこの世界の材料を元に作った、なんちゃってコーヒー牛乳。もちろんちゃんと冷やしてある。容器である牛乳瓶は、形といい大きさといい、地球の物を上手く再現できたと思う。蓋だけは再利用できるように材質を変えたけど。


 右手に持った冷えたコーヒー牛乳を高く掲げ、魔法でキュポン、と蓋を開ける。足を肩幅に開いて左手を腰に。……では。


「いただきま~すっ♪」


 牛乳瓶の淵を口に付け、ゴクゴクゴクゴク、と一気に飲む。コーヒーと牛乳が合わさった、コクのあるまろやかな甘さが口と鼻いっぱいに広がって、お風呂上がりで火照った身体に、冷たい飲み物が気持ち良く染み込んでいく。


 ゴクゴクゴクゴクッ……っぷはーっ! 甘くてっ美味しいっ!


 口腔に残っている風味と喉ごしの甘い余韻をじ~ん、と噛み締めて、暫しの間、ぼへー、っと、そのままの姿勢で幸せな気持ちに浸る。


 あー……………………うん♪


 今日はゆっくりお風呂に入れたし、美味しい物も食べられた! これなら明日も──頑張れそうっ!

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