真実と嘘
@yozakurananame
真実と嘘
何が本当で何が嘘か。自身が正しいと思ったことは視点によってがらりと変わってしまう。
ただし例外の一つとして、神と悪魔がある。
あれだけはどうしようもない、覆せない事実だ。
✼
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クリーム色の髪に、全てを包み込むような深い青の目をした天使。
それとは対照的に、全体的に色素が落ちた悪魔がいた。
二人は、というか悪魔は天使の事を睨み付けていた。
「私が奪い返してやる」
「わたくしは横暴なことは好みません」
「よく言うよ」
悪魔は僅かに笑みを含ませながら吐き捨てるように言い放った。
やはり天使なだけあって平和主義なのだろうか。
ピリピリし始めた重い空間に一筋の光、基、民が転がり込んできた。その民は思い詰めている様子で、天使を見つけると片膝をつき手を組んだ。
くろせる様、とどこか惚けたような声色で天使に話し掛けた。
だが、反対方向に佇む者を見ると咋に顔を顰めた。
「何故···」
「···、」
何故お前がここにいるんだ、ここは神聖な場所だぞ、といった幻聴が悪魔の耳へと刺さる。
そんな視線を向けられても尚、悪魔は変わらなかった。···少しだけ冷たい視線を送り返したが。
「やめなさい」
天使が凛とした声で言い放つ。辺りによく響いた。
それはよく民へと突き刺さったようで、すぐに黙ってしまった。
「正義面しやがって···」
「っ口の利き方を間違えるな!このお方は大天使、クロセル様なのだぞ!」
「はは、残念ながら大はつける必要無い事知ってたかな?」
「こいつ···っ!!」
民に向かって挑発する悪魔。悪戯が成功して喜ぶ子供のように、ゆっくり目を細め、口を三日月に歪めた。
まんまとそれに乗っかってしまう民。
その2人を見て、クロセルはふぅ、と息を吐いた。
それを耳で拾った民はハッとしてクロセルに向き直った。
「す、すみません!こいつがあまりにも失礼な為···!」
「まぁ、いいでしょう」
すぐに切り替えて許すことが出来るのが、天使クロセルのいいところだ。
にこりと微笑んでやると、民は顔を輝かせた。なんとも表情がころころと転がる民だ。
「···あいつには気を付けた方がいい」
「は?」
民の方ではなくどこか遠くを見つめながら、ぽつりと悪魔アスタロトは呟いた。
それは一体何のために発せられた言葉なのだろうか···。
「あいつは···、」
「何を話しているのです?」
「あんたみたいな奴には分からないようなお話さ。────天使の皮を被った悪魔さんよ」
は、という誰かの声がこぼれ落ちる。
クロセルはただ凛々しく、それでいて無表情でアスタロトを見つめていた。
その全てを包み込むような深い蒼は、濁ってしまった。
真実と嘘 @yozakurananame
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