第17話 09時36分 発見
足音を潜ませて一歩、また一歩と階段を下る。
時折完全に止まっては周りの音に耳を澄ませる。
だが、自分の息遣いがはっきりと聞こえる程度には静けさがこの空間を支配していた。
客室の階は部屋が締まっている場合、一本道となる可能性が高い。
そこで僕は1階を目指している最中だ。
レストランやアパレルショップなど店があるほうが、何かと身を隠しやすい。
1階に急いだ所で何か計画があるわけではない。
だが、何か行動しなければという根拠のない焦燥感が僕の心を焦げ付かせていた。
1階内部へ続く非常階段の出口が見え少しだけ焦燥感が薄れた気持ちになる。
さらに扉をよく見ると……
「何か……張り付いてる……?」
心だけは急ぎながら降りて来たペースとほとんど変わらない速度で扉へ向かった。
そして、そこに貼り付けられていたのは
急いで剥がし裏を見る。
女性が好むような可愛らしいキャラのシールがいくつも貼られていることから、部屋に備え付けられていたものではないと確信した。
正直な話を言えば、まずは僕の
僕は
消音にしててもバイブ機能の振動音もある。
何より調べている最中に強襲されれば少なくとも今の武器では太刀打ちできる気がしない。
これは様々な配信を見漁った中で、僕が学んだことだ。
夢中になって相手の情報を探っているうちに殺されたやつを何人見たことか……
見つけた
現在時刻は9時47分。信じられないほど時間が経っていた。
僕はただ階下へ降りて来ただけで40分以上かかっていたのか……
ここがフィールドとなっている以上、死角などないほどにカメラが仕込まれているはずだ。
でも、こんなつまらないカメラに興味を示す人などいるわけがない。
それは視聴者からのおひねり――そう投げ銭がますます期待できない状況だということを示していた。
いや……まだ10分以上ある。
気落ちしかけた自分の心に無理やり鞭を打ち、非常扉のノブに手をかけた。
ゆっくり……ゆっくりと引き隙間から覗く前に耳を傾ける。
物音は特に聞こえないようだ。
さらに扉を引き次は1階の様子を目視で確認する。
人がいないだけで特に荒らされたりしている様子はここから見る限りではなさそうだ。
口に手を当て、渇いた吐息を手の平で受けつつ、エントランスの奥。
ロビーに目を向けた時、
「――――ッ!!」
思わず声が出そうになった。
ロビーのローテーブル上に
――取る……これは無視できない。
フィールドの広さが僕に味方をした瞬間を逃す手はない。
自信がある人はおそらく客室階を散策する人もいるだろうし、頭の切れる人はもっと効率よく索敵をしているはずだ。
僕も時間ぎりぎりとは言え、こんな広々としたエントランスは結果的に優先度が低くなったのだろう。
ロビーの窓際にあるニキシー管時計に眼を向ける。
時刻は9時54分。
僕は扉を引ききり、四つん這いの姿勢でエントランスに入場した。
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