第2話、『主材その2]]
『ほら..."オカエリ"くださいませ。聞こえてるの?何か言い返したらどうなのよ]]
白い診察台のようなベッドに、青みがかった同じく白の病衣の様な服を羽織った少女が、そんな事を言う。
然し直後に、資料を手に取り衝撃の事実を知る。
「試作兵器type,
『アレ...とは失礼ね!]]
アルキス...と名付けられたその少女は遂に上体を持ち上げる。白い髪でグラデーションで先が金になった特徴的なウルフカット、アッシュグレイの瞳はハイライトを感じさせず...少し気だるそうに
「本当に機械なのか?」
ローザスは物を投げて来そうな彼女に問うと
『さっきまで無視しといて...はァーん? 相当アナタ面倒臭いヒトね...? ソコに書いてある事が全部よ]]
そこそこ技術力有る国とは知っていたが...まさか
「つまり君はヒトじゃ無いんだ...という事は、僕は何も気にする事ない訳だ...、」
数秒前まで、自分より若いガキに、生意気言われたと思って煩わしいと感じたが、機械の
何だか可笑しいが、ローザスは振り切った考えで心を保つ人間だ。恐らくもしも彼が鬱になった所で、結局鬱が何なのかと考え始め...自分なりに難癖付けて蘇る事だろう。...まぁ
『何よその顔...何考えてるのかしら、今度は私が
「.........、」
『ちょっと...何か喋りなさいよ、言い返しなさいよ....]]
「.........、」
『.........生きてる? 電池足りてる? オイル飲む? ちょっと......]]
何も答えずにローザスは工具を持つ。
『何か可笑しいわよアンタ...怒った?ねぇ...ねぇってば......]]
やはり無言で
その様子に少し恐怖を感じたアルキス...思わずベッドから降り、少し後退りする。
無敵の機械の私が、なんでこんな初見のボケ主人に後退りしないと行けないワケ?それなら私にも択は有るわよ?その工具で大人しくぶっ壊されてやる事などないわ...あ〜イライラする......何よコイツ......
「.........」
『.........]]
互いに無言。
でそのまま少し経つ。
「やっぱ具体的に言わないとダメよね、機械ですもんね......入力が無いと出力できませんもん、」
『...な、なんの事よ...私がそこら辺の計算機と同じだって言いたいの? できるわよ! アンタのやりたい事ぐらい...]]
「じゃあ何さ」
『......それは、私に何か......そう! 乱暴! ランボウでもするんでしょ......! へへっお見通しよそんなの.....!]]
「誰が喜ぶんだ機械に......あ、世の中広いからいるかも知れないし......別にそのヒトに
『.........ちっ]]
舌打ちして眉間にシワを寄せ
「......あ、羽織ってる服を、」
『............はいよ!]]
アルキスは手早く脱ぐと乱雑にローザスに投げつける。
「ごふっ......、」
顔にぶつけられた病衣(の様な服)からは無理にでも香ってきた匂いは
「始めるよ、」
『......はいはい]]
特殊素材で構成されたリアリティが過ぎる皮膚、このままではどう足掻いてもただの少女...。なのだが...ネジが付いているのを見ると、やはり機械なのだな...と思わされる。彼女の体温は言うまでもなく冷たい...。
そのネジに多目的ツールのドライバを当てて、ウィーン...と外していく。取り出した独自規格の星型ネジは、転がしてきたキャスター付き作業台のトレイに置く...。そこそこのサイズはあれど、落としたら地獄だろう...。彼女にボロくそ言われるのは目に見えている。
丁寧に全て外すと...全てのネジの対直線が交わる部分に取り外す為の装置を当て...スイッチを入れる。
しゅうぃん!
モーター音がすると、つい先程までは無かった境い目が顕になる...蓋と身体の境い目だ。グイッと指を入れて手前に引くと...
かこっ...!
軽い音を鳴らしてそれは外れた。くり抜かれた彼女の背中の内部には、内蔵では無く、配線や装置がびっしりと...。
「すごいな...、」
思わず感嘆の声が漏れる。
彼女は触覚などは感じる事が出来るが...一応彼女の任意次第でオフにできる。外す時に触られて何も言わなかったのは、慣れている訳でも無く、ただただオフにしていただけである...。さっきのグイッて指を入れられる感覚なんて想像もしたくない。
ローザスが配線に工具を当てたところで...
「電源切って貰える?」
『なんでよ]]
「君の中身ごっちゃごちゃで汚い...、整えるんだ、」
『私が汚いですってぇ!? 失礼な...!]]
アルキスとしてはぶん殴っても良かったが、今動けば当てられた工具でちぎれてしまうかも知れない...。
「というか...今まで電源切らずにやってたのか?」
『なんで私が従わにゃイカンのよ]]
「前のヒトかなり、というか滅茶苦茶な凄腕だったんだな...ちょっと勿体ないね、......あぁ、僕はそんなに良い腕は持ち合わせて無いからさ...電源切らないと
短絡とは、回路に金属製の部品が触れる
『あぁ...もう、分かったワよ...切るわよ? ちゃんと身体支えなさい!]]
ガクン...と目を開けたまま崩れ落ちそうになる少女を慌てて抑える...。工具は上手く避けたが...。
「骨が折れるわ...、ふう...、」
一旦アルキスを横たえると、もう一つキャスター付き作業台(工具が入って最も重いもの)を持って来て...彼女の前でロック。力をかけても動かない事を確認すると、作業台を足で挟むように、彼女を前から寄りかからせる。
ゴン......
頭に打たれたアルミの作業台から鈍い音が響く。
「やっべ...、うーん......まぁいっか、」
水に流して作業を開始した。
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