第5話 カメラマンとの出会い
ユメと行った冒険はすごく楽しかった。誰かと冒険するって楽しい。これからも一緒に行けたら嬉しいけど。ユメには危ない場所を経験して欲しかっただけで、もう連れて行きたくない。ユメには普通の場所で好きなことを見つけて生きていってもらいたい。
だけど、これからもダンジョンでライブ配信をしようと思った時に、誰かカメラマンを雇った方がいいかな?
「う〜ん。でも、他の人って信用でいないんだよね」
信用できる人がもっと簡単に作れるなら、学校でもイジメにあってないもんね。う〜ん、本当に悩む。
「うわっ!くっ、くるな」
今日は夜にやる配信前に、冒険者としての仕事をするために洞窟型のダンジョンに来た。ここって初心者も入れるから、魔物に負けちゃう子がいるんだよね。
「はぁ〜助けてやるか。ねぇ、手助けはいる?」
悲鳴の聞こえた場所に行くと、ひ弱なメガネくんが尻餅をついてゴブリンに襲われていた。マジで? ゴブリンだよ。最弱だよ?
「えっ、あっ、お願いします!!!」
「はいはい」
私はゴブリンの頭を殴って終わらせる。
ゴブリンってなんかバッチいから触りたくないんだよね。
「えっ? 一撃? えっ、それにあなたは!」
「うん? 私のこと知ってんの?」
「あっ、はい。アクゼ配信見てます」
「え〜なんだよ、信者かよ。キモっ! 話かけちゃったじゃん」
「ボクからではないので、ノーカンでお願いします」
なんだかめっちゃ必死に訴えてくるから笑っちゃう。
「ふふ、そだね。メガネ君いいこと言うじゃん」
「メガネ君?」
「そそ、ひ弱なメガネ君。どうして一人でこんなところにいるの? 仲間は?」
「ボクはソロです」
「へっ? そんな弱そうな見た目なのにソロ?」
「グハッ!」
何やら傷ついたように息を吐き出すメガネ君。見るからに一般人なんだもん。初心者丸出し。ただ、思っていたよりも歳を取ってるように見えるけど?
「新人には見えない歳だね。怪しくない?」
「怪しくはない! ボクは脱サラして、冒険者になったんだ」
「脱サラ? 何それ?」
「へっ? ああ。えっと、会社を辞めて冒険者になったんだ。会社じゃないけど」
「ふ〜ん。会社入れるぐらいに賢いのに、会社を辞めて冒険者ねぇ。あんたバカ?」
「グフっ!実際に言われるとここまで破壊力があるのか!辛い」
毒舌なれしていないのか打たれ弱いから、私の言葉を聞くたびにダメージ受けてる。
「なんか面倒な性格してそうだね。それで?なんで冒険者なんかになったの?いいことないよ?普通の生活の方が絶対にいいよ」
「君を見たから。君を見て、ボクは冒険者になろうと思ったんだ」
「えっ?マジでキモいじゃん」
「グハッ!」
「まぁ、メガネ君の人生だからさ。好きにすればいいけど。絡んでこないでね」
「ああ。冒険者になったことはボクが決めたことだ。君に迷惑をかけようとは思っていない」
まぁ悪いやつじゃないのかな? 関わる必要はないけど。
「そんじゃ。助けてあげたんだから、命は大切にしなよ」
私が先に進むと、メガネ君ついてきた。
「ねぇ? ストーカー?」
「違っ! いや、確かに君の戦いを見たいと思ってはいる」
「う〜ん、見してあげてもいいよ」
「えっ? メガネ君弱そうだから、襲ってきても倒せそうだからさ。そだね。じゃこれ持って」
「えっえっ?」
私は臨時でメガネ君にカメラを渡した。
「イエー、アク見信者ども、緊急ライブダンジョン攻略だぜ! おっ、視聴者いきなり100人ってみんな暇だね。別に思いつき配信だから、短めね。言いたいこと言うけど嫌ならどっか言ってね。ここでは私が神だからいい?そんじゃ行こうか。今日は初心者講習ってことで、洞窟ダンジョン攻略していくよ。洞窟はバッド系とかゴブリン系が多いから、キモいんだけど。案外弱いから初心者にはおすすめだよ」
私の戦いを見たいと言われて、初心者のメガネ君に戦い方を教えるために、ついで配信をすることにした。
「まずは、ゴブリンからだけど。上層にいるゴブリンは、小人みたいで小さくて動きも遅いの。まず大事なのは、ゴブリンの動きをしっかり見ること。初心者の間は緊張して戦うことに夢中になるけど。冷静にゴブリンを見ていれば大丈夫だから」
私は歩いてきたゴブリンを、軽く叩いて倒して見せる。
一応、ゴブリンが私を攻撃するシーンも見せて、避けるところから倒してみた。
「どう?できそう?」
視聴者とメガネ君に問いかけると、メガネ君がうなづく。
「次がバッドね。デカいコウモリなんだけど。あいつらは目がないからしっかりと動きを見て爪を避けてから背後の羽を攻撃する」
バットが地面に落ちる。
「誰でも最初は初心者で、魔物を怖いと思うかもだけど、やってみればできるから。いい?いきなり化け物みたいな強いやつを相手にしろなんて言わないけど。全くやったことがないなら。せめてこれぐらいの経験はしてみなよ。んじゃ。今日の配信終わり!」
カメラの電源をオフにさせる。
「よし。どうよ?」
「えっ。あっあのぼくのために」
「メガネくんのためじゃねぇよ。初心者のため。もうついてこないでね」
私はカメラを受け取って、一気に距離を空けるために走り出した。
今度はついて来る気配がなかったから、そのまま下層に向けて走り抜けた。
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